沖縄「米軍基地」用地が競売にかけられる驚愕実態 「軍用地バブル」に生じた在庫過多の異変

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競売にかかった嘉手納飛行場の土地も、もとは708㎡あったが、2020年に70〜71㎡の10筆に細分化されて売り出された。それでも9筆が売れ残り、競売にかかった。入札の結果、1筆当たり約608万円から707万円で落札された。

細分化された嘉手納飛行場の土地の「公図」。昨年3月、9筆が那覇地裁の競売にかけられた(筆者撮影)

軍用地の価格は沖縄の不動産市場で、年間の賃借料の何倍かで示される。例えば、707万円で落札された土地は年間約11万8000円の賃借料が入るので「約60倍」(年間利回りは約1.7%)だ。

この9筆で最も低かったのは「約52倍」(同1.9%)だった。軍用地はネットにも数多くの売却情報が出ているが、52倍から60倍の売却希望価格がついており、ほぼ相場に近い価格で売れたと見ることができる。

軍用地の相場は基地によって違う。基地の立地や、地元に返還される見通しなどが違うためとされる。

軍用地の競売が2023年に急増した理由

昨年3月の競売では、嘉手納飛行場の北側にある「嘉手納弾薬庫地区」に同じ不動産業者が持っていた3筆もかけられた。

嘉手納弾薬庫地区に進む道には立ち入りを禁止する看板が立っているが、基地内に「黙認耕作地」と呼ばれる農地を持つ「農耕者」は通行が認められる(筆者撮影)

約51倍で落札した大阪府の男性(40)は、「競売は不動産業者に支払う手数料がかからないので、その分は安く入手できると考えて相場程度の価格にした」と話した。この入札には12者が入札した。

競売は「たたき売り」のように言われることもある。しかし、少なくとも軍用地の場合、透明性が高く、現地を見なくても入札しやすいこともあって一般の相場と変わらない価格がつくようだ。

実は、軍用地の競売は2023年に急増した。9月までに計25件の競売があったが、2021~2022年は1件ずつで、その前は2012年までさかのぼらないと見つからない。

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