全旅連にもこうした悲痛の声が多く寄せられている。
「館内設備の破損により一部の客室が浸水、使用不可能になった。復旧には半年程度かかる見通し」(能登半島の宿泊施設)
「外壁がはがれ、上下水道が使用不能になり、営業は不可能」(別の能登半島の宿泊施設)
被害は施設だけではない。風評被害の影響も甚大だ。北陸地方では、地震による被害が比較的少なかった能登半島以外の宿泊施設でもキャンセルが相次いでいる。
帽子山氏が運営している山代温泉(加賀市)の宿泊施設でも、6月まで宿泊予約のキャンセルが発生しており、損失額は600万円だという。同地区は石川県の南西部に位置し、地震の被害は小さかった。
風評被害が続けば改装を決断できない
地震が起きた正月休みは宿泊施設にとって「最大の稼ぎ時」。高価な正月限定宿泊プランを販売し、通常より豪華な食事を提供する。売り上げの機会損失も大きかった。福井県の宿からは「越前ガニを仕入れていたため、キャンセルによる損失が大きい」という声が複数上がっている。
石川県内の宿泊施設では、最大1億円を超えるキャンセル損失がすでに発生している。旅館やホテルなどの宿泊施設は固定費が重く、売り上げの減少は経営悪化に直結しやすい。また風評被害が長引けば、3~4月の繁忙期の売り上げも厳しくなる。
震源に近い宿泊施設では建物が大きな被害を受けた。営業再開には建て替えを視野に入れた大規模リニューアルが必要。ただ、風評被害による宿泊キャンセルなどが始まり、先が見通せない中で大規模改装に踏み切るという決断はしづらい。
「コロナ禍が終わり金融機関への返済計画を立てていた。宿泊客も戻ってきたので『これで返していけるぞ』というタイミングだった。かなり厳しい」と、帽子山氏は吐露する。
閉業を選択する宿泊施設が多数出てくることも予想される。
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