「餃子の王将」20カ月連続売り上げ更新の理由 「個店の味からチェーンの味へ」変貌を遂げた

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そもそも、同チェーンではなぜ個店の個性が強かったのか。

「大きな理由として、地域によって味の好みが違うことがあった。しかしむしろ、店主の好みも大きかった。『自分はこの味が好きなんだ』と。しかし調理はサイエンス。基本的な知識と技術を身につけて、そのうえでそれぞれの経験と工夫を生かしてもらえればと考えている」

確かに、同じ材料、同じ手順で調理しても、料理人の勘や経験、センスによって出来上がりは微妙に異なってくる。現在の、ある程度の統一化が浸透した餃子の王将においても、その違いを見てとれるようだ。

「量が多い」「量が少ない」問題

例えば、餃子の王将の場合SNSで「量が多い」「量が少ない」という相反する内容の投稿が見られることがある。写真でも確かに違うように見える。しかし、食材の量は統一されているはずだ。この謎について現場で鍋を振るベテランのスタッフに質問したところ、調理者の技術の違いも関係しているのではとのことだ。

炒飯(572円)。国産米を使い、ふっくらと仕上げることで、米の甘みを引き出している。炒め方や、調味料の入れ方にコツがあるようだ(撮影:梅谷秀司)

一例として、炒飯が挙げられる。炒飯はご飯をふっくらと仕上げることが肝要だ。米本来の甘みが引き出され、周囲にまぶしつけられた調味料と混じり合って絶妙な味となる。ふんわりと盛り付ければ、専用の皿にちょうどよいバランスで収まる。ところが炒め方の違いで、ご飯がふんわりとしないことがある。これにより、量が違うように見えてしまうことがあるそうだ。

だとすれば、SNSなどで「量が少ない」と書かれたことがある店舗では、炒め方を研究したほうがよいということになる。客、とくに長年通っているファンは少しの違いにも敏感なのだ。

飲食店が苦戦したコロナ禍の3年間。テイクアウトや宅配が一般的になるなど、食事のあり方が変わるとともに、もうひとつ、大きな意味があった。「外食の存在意義」を改めて問い直したことだ。

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