「餃子の王将」20カ月連続売り上げ更新の理由 「個店の味からチェーンの味へ」変貌を遂げた

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これも渡邊氏の発案という油淋鶏(638円)。サクサクと軽い衣が特徴。練馬高野台駅前店の人気メニューだそうだ(撮影:梅谷秀司)

業績としては、2024年3月期第2四半期の売上高が497億4400万円。第2四半期として2年連続で過去最高売り上げであるほか、同月比過去最高売り上げを20カ月連続で更新している。

人が企業の価値を作るという理念

「ここまでには10年かかった」と渡邊氏。2013年、射殺された前社長の大東隆行氏を引き継いで社長に就任した。当時(2014年3月期)の売上高は762億円であったが、当期(2024年3月期)の売上高は1000億円を超える見込みであるという。

「人が企業の価値を作る」という考えのもと、「王将大学」と名づけたスキルアップ研修や調理技術を学ぶ「王将調理道場」などの人材育成、設備投資による労働環境の整備に取り組んできたという。店舗で手包みしていた餃子を、工場で生産するようになったのも、渡邊氏による改革だ。2016年には東松山工場を竣工。これにより、品質管理の徹底と生産性の向上を同時に行えるようになった。

とくに、調理の基礎から改めて研修し直し、調理法もマニュアル化したことによって、個店ごとの味わいの違いをある程度統一した。

実は全店での調理技術の向上に取り組めたのは、コロナ禍も大きく関係している。緊急事態宣言中や時短要請の時期、空き時間を調理講習のライブ配信などによる人材教育にあてた。3年で4万5000人への研修を行い、「包丁の研ぎ方から勉強し直していた」そうだ。また設備投資も進め、2022年に全店での餃子焼成機等の入れ替えを終えたという。

一番人気の一品料理、ニラレバ炒め(583円)(撮影:梅谷秀司)

「コロナ禍では、日常食の店として、熱々でおいしいものを提供する義務があるから協力してくれるよう、全従業員に伝えた。コロナはいつか終わる。そのときに、ロケットダッシュをするための準備をしようと。その結果、クレームは減り、販売数量は増えていった」

このようにコロナ禍を経ることで、冒頭の渡邊氏の言葉通り「餃子が2019年より確実においしくなった」わけだ。

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