日本企業で「管理職」が名誉職になっている大問題 本来の仕事が果たせない原因にもなっている

拡大
縮小

ただし、これは降格ではありません。マネジャーはあくまで「役割」なので、ただマネジャーに向いていない、もしくは他の人にマネジャーを任せたほうが、バランスがいいという評価をされたに過ぎず、社員としての価値が減ったわけではありません。だから、プレイヤーに戻っても決められた給与レンジは変わらないのです。

もちろん、給与レンジごとに求められる期待値は違います。たとえば、売り上げ金額の責任の大きさやカバー領域の広さ、仕事の難易度などによって給与レンジは変わります。でも、マネジャーであること自体と、給与レンジは連動していない。これが本来のジョブ型雇用です。

ジョブとしてのマネジャーがあるだけで、その役割を辞してもプレイヤーとして期待値に応えれば、同じ給与レンジで評価される。あくまで、ジョブに対して給与が支払われるということです。

「立場」に対するプライドがなくなる

ちなみに僕がいたときは、マネジャーが直接コントロールできるチームメンバーの範囲は、マネジャー1人につき約7人が適正とされていました。

メタ思考~「頭のいい人」の思考法を身につける
『メタ思考~「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

これをスパン・オブ・コントロールといいますが、仮にメンバーが10人程度になれば、マネジャーを2人にして各5人のチームにしたり、逆にメンバーの数が減れば、マネジャーの数も減らしたりする考え方です。人数にも考慮して、確実に経営の方針を伝えられるようにするから、会社は目標を達成できるのです。

こうした本来のジョブ型雇用が浸透すると、それぞれの適正を見極めたうえで「役割」が決まるため、当然ながら労働生産性は上昇することになります。

また、マネジャーを辞することは降格ではないため、いい意味で「立場」に対するプライドがなくなる傾向もあります。どんなジョブを振られても、自分の価値はまったく目減りしないということです。

澤 円 圓窓代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さわ まどか / Madoka Sawa

元日本マイクロソフト業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年日本マイクロソフト入社、2006年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、圓窓代表取締役就任。2021年2月より日立製作所Lumada Innovation Evangelist就任。琉球大学、武蔵野大学にて客員教員を務める。著書に『個人力』『「疑う」からはじめる。』他。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT