災害時のSNS「デマ・誤情報」惑わされない対策6つ 「家族・友人・知人との直接の会話」で広まる事も

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デマとの闘いにおいて、まず重要なのは自己省察である。つまり、私たちは容易にデマにだまされる可能性があることを自覚し、情報に対して謙虚な姿勢を保つべき、ということだ。

筆者の研究チームが行った調査では、デマを見聞きした人の77.5%が、自分がだまされていることに気づいていなかった。特に50~60代が若い世代よりだまされやすい傾向にあることがわかっている。

デマや誤情報は、SNSに親しむ世代だけの問題ではなく、すべての世代が「自分もだまされるかもしれない」という意識を持つことが重要である。

情報の検証も必要だ。

他の人やメディアがどのように報じているかを確認する、画像を検索してみる、誰が発信しているか確認する、情報ソースを確認する、などの方法がある。 情報のあふれる現代において常に情報を検証することは困難でも、情報を拡散したくなったときだけでも「ちょっと保留」して立ち止まり、確認することが肝要だ。

Xでは、誤解を招く可能性のある投稿にユーザーが補足情報をつける「コミュニティノート」機能が導入されている。これは投票で情報が追加されるため、集合知によって比較的信頼性の高い情報が提供されている。コミュニティノートの確認も情報検証方法として有効だ。

SNSに限らないデマの拡散手段

また、デマの拡散はネットだけの問題にとどまらない。

筆者の研究チームが行った調査では、デマの拡散手段として「家族・友人・知人との直接の会話」が最も多かった。また、コミュニケーション研究によれば、専門家の情報よりも身近な人の情報を信じやすいことが知られている。

そのため、身近な人からの情報でもすぐに信じるのは避け、慎重に情報を扱うべきだ。今回の災害でも、SNSで広まったデマが口コミを通じてネットに触れていない人々にまで広がるケースが起こり得る。

SNS側の対策も期待される。特にXは、イーロン・マスク氏に買収されてから、モデレーション力が弱まったとの指摘がある。

表現の自由があり、どれもこれも削除すればいいというものではないのは大前提だが、社会を混乱させる偽情報に対しては、厳格な規約の運用が求められる。偽情報を拡散しての収益化の停止も、重要な対策の1つである。

山口 真一 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授

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やまぐち しんいち / Shinichi Yamaguchi

1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学、ネットメディア論、情報経済論等。NHKや日本経済新聞などのメディアにも多数出演・掲載。主な著作に『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房)、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)等がある。KDDI Foundation Award貢献賞等を受賞。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、シエンプレ株式会社顧問、株式会社エコノミクスデザインシニアエコノミスト、総務省・厚労省の有識者会議委員等を務める。

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