子育て支援金「国民負担増加なし」のカラクリ 医療費の自己負担増加は負担増ではないのか

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自己負担はあまり目につかないので、今後もさらに行われる可能性がある。しかし、増やされる人の側から言えば、かなり大きな負担増になってしまう。

したがって、「定義によって自己負担は国民負担に含まれません」と言って終わりにするわけにはいかない。この問題については、さらに突っ込んだ検討が必要だ。

とくに、医療保険や介護保険における自己負担のあり方について、今後議論する必要がある。現在は所得によって差が付けられているが、所得の定義をどうするか、金融資産からの所得を入れなくていいのか、また所得だけでなく資産額も基準に加えるべきではないか、等の問題がある。

そして自己負担率の適正な水準がいかなる水準なのかについての議論が必要だ。それは、税や社会保険料の適正な負担率がどのようなものなのかという問題と同じように、重要な問題になってくる。

適切な自己負担が必要

なお、自己負担の増加は必ずしも悪いことではない。日本の老人医療は、当初、全額自己負担なしで発足した(ただし、一部の高所得者を除く)。このために、必要がなくても病院に行く人が増えるというおかしな事態が発生した。同じことが、介護保険についても言えるだろう。もし自己負担がなければ、必要性が疑わしい場合にもサービスが使われるということになりかねない。

こうした事態が増えれば、社会保険としての機能を果たせないことになってしまう。これを防ぐためにも、一定の自己負担を求めるのは、必要なことだ。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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