金融の正常化は円安にストップをかけ、企業の収益に悪影響を与えるので、実現が遅れてきた。しかし、過剰な金融緩和の継続によって、日本経済の生産性が著しく低下した。ここからの脱却は、焦眉の課題だ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第112回。
2024年最大の課題は金融政策正常化
今年の金融政策の最大の課題は、金融の正常化の実現だ。ここで、金融の正常化とは、第1にマイナスの政策金利から脱却すること。第2にイールドカーブコントロール(YCC)を廃止し、長期金利の水準を市場の実勢に任せることだ。
1つ目について、コロナ禍で多くの国が政策金利をマイナスにしたが、その状態からは脱却した。**いま先進国の中でマイナス金利から抜け出せないのは、日本だけで、2つ目についていえば、もともと中央銀行の金融政策は、短期金利である政策金利を操作することであり、長期金利は市場の実勢に委ねるのが、伝統的な方法だ。市場で形成される金利体系に無理矢理に介入しようとする日本の金融政策は、下記のようにさまざまな問題を引き起こしている。
これまでの異常な金融緩和政策は、短期的な要請だけに動かされたものであり、低金利、円安、補助金漬けの経済をもたらし、その結果、日本経済の生産性が低下した。
生産性を低下させた理由は、次のとおりだ。
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