日本がGDPでドイツに抜かれるのも、株価が急騰しているのも、円安という共通の要因によるものだ。ただし、前者は、長期的なトレンドであるのに対して、後者は、円高になれば崩壊する一時的な現象だ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第113回。
日本はドイツに抜かれたが、株価は上昇
日本のGDPが2023年にドイツに抜かれることがほぼ確実だ。日本は世界第3位の経済大国だと思っていたが、4位に転落することになる。日本の国際的地位の低下は、日本の経済的パフォーマンスが悪いことの結果だから、日本にとって悪いニュースだ。
しかし他方で、株価はバブル崩壊後の最高値を更新しつつある。
これら2つは、矛盾するニュースであるように思われる。日本が弱体化しつつあるというのに、どうして株価が上昇するのか?
市場為替レートでドル換算した1人当たりGDPの推移を、日米独について見ると、日本の1人当たりGDPは、1990年代の中頃から成長しておらず、数年前からドイツに抜かれている。だから、経済全体のGDPについても、いずれドイツに抜かれるのは必然だった。
2000年に行われた九州・沖縄サミットのときには、日本は参加国中でドル表示の1人当たりGDPが最も高かった。しかし、2023年広島サミットでは最下位になってしまった。つまり、ドイツやアメリカには経済を持続的に成長させる要因があるが、日本にはないということになる。
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