子育て支援金「国民負担増加なし」のカラクリ 医療費の自己負担増加は負担増ではないのか

✎ 1〜 ✎ 110 ✎ 111 ✎ 112 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ところが、実際には、施策の効果に関する検討は素通りして、支援策が決まった。そして、増税が最初から否定され、負担増をいかに見えにくくするか(ありていに言えば、「ごまかすか」)が考えられている。本末転倒もはなはだしい。

負担ゼロは「見せかけ」か?

政府は当初、医療費を削減する予定だった。予算折衝の過程で、財務省は、診療報酬本体(医師や看護師の人件費)のマイナス改定が適当との財政制度等審議会の答申に基づき、診療報酬の本体を1.1%削減する案を提案した。そうすれば、医療保険全体としての支出を増やすことなく、支援金を作り出すことができると考えたのだろう。

ところが、実際には、医師会の強い反対にあって、診療報酬の本体は、0.88%増になってしまった。薬価を引き下げたが、診療報酬全体では0.12%減にしかならなかった(注1)。これに加えて支援金を増設すれば、医療費全体は増えてしまうだろう。

ところが、岸田首相は、国民負担の増加なしに少子化対策を実現すると強調してきた。上記のようなことになれば、この説明と矛盾するのではないか?

矛盾するという報道もある。それによれば、保険料の引き上げは不可避だが、それにもかかわらず、12月20日の大臣折衝で、賃上げ措置による社会保険の負担は負担増と見なさないと合意した。これは「見せかけ」の負担ゼロだという議論だ(注2)。

ただし、私がチェックしたかぎり、昨年12月20日の大臣折衝に関する厚労省の発表には、そのような「合意」は記されていなかった。

(注1)武見大臣会見概要(財務大臣折衝後)、厚生労働省、令和5年12月20日。
(注2)「微減の裏でやっぱり膨張」、朝日新聞、12月23日。「見せかけ」の負担ゼロ、朝日新聞、12月25日。

医療保険の保険料については、現時点では何も提起されていないし、議論にもなっていない。したがって、大臣折衝でその扱いについて議論がなされたとは思えない。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事