(第3回)従来型の海外生産は製造業を衰退させる

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 なお00年度と比べると、現地調達比率は、北米とアジアで大幅に上昇している。その半面で、日本からの調達比率は、北米、アジア、ヨーロッパともに低下している。これは、現地国企業からの調達が増えたということではなく、日本の部品メーカーなどが海外に移転したことの結果なのであろう。

ここからわかるのは、現地の需要に対応しようとする戦略だ。つまり、「日本人が使うものをアジアの工場でアジアの労働力を用いて生産する」ということではない。そして、アジアの場合、売れるのは低価格製品が中心で、従業員1人当たりの売り上げは少ない。ただし、低賃金なので国内生産より利益率は高くなる。

アジア需要では製造業は発展しない

まとめれば、次のようになる。まず製造業の場合、海外の雇用は国内の雇用に比べてかなりの比率になっている。この傾向は自動車や電気機器について著しい。しかし、海外の従業員1人当たりの売り上げは、国内の半分強でしかない。海外は従業員の給与が低くて済む割には、利益が増加しない。06年頃には、国内生産のほうが利益率は高い状態にあった。

日本企業は、安価な労働力を求めているというよりは、安価な需要を求めているのだ。このことは、「海外事業活動基本調査」のアンケート調査で直接に確かめることができる。「投資を決定するポイントは何か」という設問に対する回答で最も多かったのは、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる」である。しかも、その比率は上昇している(04年度の61・4%から09年度の68・1%へ)。

「良質で安価な労働力が確保できる」は、26・2%しかなく、しかも04年度の46・7%よりは低下している。また、「品質・価格面で日本への逆輸入の可能性がある」は、09年度において、11・3%しかない。

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