(第3回)従来型の海外生産は製造業を衰退させる

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1人当たりの売り上げは国内の半分

前回述べたように、「基本調査」による製造業の海外売上高比率は17・2%だ。海外売上高比率=海外売上高÷(海外売上高+国内売上高)なので、海外売り上げは国内売り上げの20・8%である。しかし、従業員数の比率は、35・6%だ。したがって、従業員1人当たりの売り上げで見れば、海外生産は国内生産の58・4%でしかない。これは全世界での数字だが、アジアだとこの比率はもっと低くなる。

ただし、アジア地域では賃金が低いので利益率は高くなる。もっとも前回述べたように、国内生産と海外生産では売上高経常利益率にあまり差がなく、06年頃には国内のほうが高くなる現象すら生じた。

こうしたことが生じる原因を考えるために、製造業現地法人の現地・域内販売比率を「基本調査」で見ると、09年度は、北米が94・7%、ヨーロッパ89・3%、アジア75・9%だ。欧米での現地法人生産のほとんどが現地向けのものとなっているのは、自動車などの生産が多いからだろう。

アジアの場合には、日本への販売比率は18・5%であり、少なくはない。ただし00年度においては、アジアの現地・域内販売比率は66・2%で、日本への販売比率は、24・7%だった。つまり、この9年間に現地・域内販売比率が上昇する半面で、日本への販売比率は低下している。これは、アジア地域における需要の増加率が日本国内での需要の増加率を上回っているからであろう。

他方で、製造業現地法人の現地・域内調達比率を見ると、北米が67・9%、アジアが72・9%、ヨーロッパが57・3%となっている。つまり、各地域ともに仕入高の6~7割を現地・域内から調達している。日本からの調達比率は、北米が27・2%、アジアが26・0%、ヨーロッパが33・9%だ。アジアでの生産についてすら、「日本から」のほうが「日本向け」より多い。

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