そもそも帽子を燃やす皮肉も、それを茶化す意味も、なかなかわかりにくい。ただ、その炎上理由は、その帽子の色がパレスチナの国旗に酷似するから、という理由だった。パレスチナの国旗は、赤い三角印を全面に、緑と黒と白のボーダーラインが特徴的だ。三角印は、解釈しだいではとんがり帽子に見えなくはない。
オンラインを中心に怒りを買った同社は謝罪に追い込まれた。ガザの現在を理解しない無神経、あるいは意図的であるのではないかと指摘された。もちろん、同社の謝罪とは別に、現場デザイナーがどのような意図をもっていたかは断言できない。
ただし、教訓は次のとおりだ。
おそらく意図とは別に、文化的な敏感さをもつ必要があるだろう。企業として出す創作物が、宗教的なシンボルや政治的な意味をもってしまうケースがありうる。また時代の文脈を意識する必要があるだろう(おそらくガザ侵攻がなければ炎上しなかった案件かもしれない)。
また間違いや失敗があった場合に、いかに素早く謝罪等の対応を行うか。説明責任を果たせるように準備するかが重要だろう。くわえて、このような事件が生じないように、マーケティングや宣伝だけではなく、より多様性を確保したチームで内容を検討する必要があるのではないか。
この件を読みたい方は「Marks & Spencer Palestinian flag」などと検索してほしい。
生成AIにかかわる企業炎上”事件簿”
そして2023年は生成AIがビジネスシーンを騒がせた一年だった。結果として、炎上事件もAIにからんだものが増えていく。日本で報道されたものでいえば、弁護士が法廷で引用した判例がChatGPTからのもので偽判例というのがあった。これはもはやご愛嬌で、ChatGPTが間違いを犯すと世界に教えてくれた事例だった。
その他、私の基準で選んだのが次だ。
2.テックイベントで、生成AIで作られた非人間が講演予定者として名を連ねる
まず「DevTernity」は興味深かった。これは有名なテックイベントでマイクロソフトなどの有名な技術責任者も参加する。そこで注目された登壇者の一人が、なんと生成AIで作られた非人間だったのだ。
はじめからAIと言っていればよかったかもしれない。しかし、性別等を含む登壇者の多様性が目的だったとされ炎上したのだ。
なるほど、現在、特定の集会で「男性ばかりじゃないか」とか「特定の人種ばかりじゃないか」と非難されるケースがある。そこで生成AIを使う「多様性ウォッシュ」ともいうべき“手口”が今後も増えるだろう。
この件を読みたい方は「DevTernity AI」などと検索してほしい。
3.英国の政治家のディープフェイク動画
英国のサー・キア・ロドニー・スターマーは労働党の党首だ。そんな彼が、異常なテンションで職員を罵倒している動画が拡散した。そしてその後に完全なディープフェイクだと判明した。
しかし、判明するまでには何百万回も閲覧された。投稿主は弱小なX(元twitter)ユーザーであり、たったの3000フォロワーしか有していなかった。拡大するときには多くの目に触れる。しかしディープフェイクだとわかったときには多くの目に触れない。まったく数が釣り合わないなかで、悪評だけが伝播していく。これは政治家の例だが、企業人の同様の例が多発していくだろう。今後の予言として面白い事案だった。
この件を読みたい方は「Keir Rodney Starmer deep fake」などと検索してほしい。
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