4.オーストラリア議会をめぐる、捏造スキャンダル
他人事ではないのは、オーストラリア議会の事案だ。簡単にいえば、有名な会計事務所らに規制をかけようとする資料が会計学者らから提示された。それは会計事務所がクライアントに不正行為を行ったとするスキャンダルが前提になっていた。クライアントから不正にお金をだまし取ろうとしたのだ、と。
しかし、この資料。学者の一部がAIを使って作成したもので、そんなスキャンダルは存在しなかった(!)。そもそもそんなクライアントを監査などしたこともなかった、というお粗末な資料だった(これで学者というのが凄い)。ただ、これも汚名を着せられるときは急速に広まり、ただし汚名を返上するときには誰も関心がない。そうした状況はいつまで続くのだろうか。
この件を読みたい方は「Australian academics apologize AI-generated allegations big four consultancy firms」などと検索してほしい。
5.生成AIで料理画像を作る、海外のUber Eats
現在、生成AIは画像も作ってくれるが、それを料理の画像で使うこともできる。さらにレストランのホームページで作ったらどうだろうか。ホームページの画像と実物が乖離していると怒る人もいるだろう。しかし、美しい写真を撮るよりも低コストに違いない。
そこで話題になったのが海外のUber Eatsだ。実際にはUber側かレストラン側のどちらがAI画像を使ったのかわからない。ただ、たとえば機械的にあてはめたような画像が使われているケースがあるとして炎上している。
とくに地方料理については、有名ではない単語が使用される場合がある。
まったく見当違いの料理の写真が生成されており、悪ふざけのような光景が広がっているレストランがある。なお、この件を読みたい方は「Uber Eats AI-generated food images」などと検索してほしい。
文化的な背景、ならびに、世相。さらにはAIに関わるものが2023年の炎上事件というのは象徴的だった。もちろん生成AIは可能性が大きい。しかし、同時に炎上させない使い方を模索したいものだ。
炎上を逆手に取った企業も
なお、日本では有名なブランドではないので報じられなかったと思われる事件がある。「パシフィカ」という、コスメのブランドだ。
私は“事件”と書いたが、正確には炎上を回避した“事件”といえる。同社は、2023年のパッケージに、“You are so pretty.”ではなく“You are os pretty”と書いて印字してしまった(soではなくos)。ただし、同社はこれを回収することなく逆利用した。
むしろ、これを回収するのは廃棄物の増加につながるとした。回収することは同社のSDGs目標に反するのだ。そして、誤字のパッケージを買ってくれたら同社が地球環境のために、販売数量一つにつき木を一本植えるとしたのだ。さらにこの方針を発表することで、同社の方針である原材料の選択ポリシーや企業方針を伝え、ブランディングの強化につなげていった。
ここまでくると、まるで意図的に誤字をしたのではないかと思うほどだ。もちろん冗談である。ただ炎上を逆利用するくらいの姿勢があっていい。企業はいつ炎上するかわからないものの、それを受け止めるだけではなく、炎上させるどころか、それをプラスに転嫁することこそ重要ではないだろうか。
日本で報じられなかった炎上、あるいは非炎上“事件”はさまざまな示唆を私たちにくれる。
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