ヤマハ、「中国ピアノ市場の変調」により曲がり角 2024年は新たな「成長ストーリー」を描き出す年
例えばインド。デリーやムンバイなどの大都市では1人あたりGDPが5000ドルを超えている。インドでは地域の伝統的な楽器の音を取り入れた電子楽器が人気で、すでに製造拠点を現地に置いている。
製品でいえば、楽器の中でもギターは成長が続く。ギター市場でのシェアはアメリカのフェンダー社に次いで世界2位。エレキギターの入門機の評価が高く、ギター売り上げは過去10年間の間に3.5倍に成長した。2022年度のギター売り上げは379億円で、楽器の売上高に占める割合は13%だ。
ギターは従来から戦略領域と位置づけられている。2014年にエフェクターなどを手がけるLine6社(アメリカ)を、2018年にはアンプを手がけるAmpeg(同)ブランドの事業を買収し周辺機器を強化した。
2023年にはヤマハが手薄だったクラシックギターで知名度が高いコルドバ社(同)も買収。今後は中高価格帯を強化し世界トップシェアを目指す計画だ。
国内での製造強化と次なる変化も
新興国とギターの2つは従前の戦略領域だが、次の一手といえる変化も表れている。
2023年12月22日、国内の楽器製造子会社ヤマハミュージックマニュファクチュアリングの吸収合併を発表した。本社との強い連携のもと、技術・技能の分散回避と継承、より柔軟な製造体制の構築が目的だ。
ヤマハはこれまで、コストや効率の観点から海外工場への工程移管を積極的に進めていた。しかし、現地労務費の上昇や円安で海外生産のメリットが低下。かつ中国で大きな市況変化があった今、新たな施策として国内のものづくりを強化する方針を打ち出した。
これまで、ピアノフレームについては生産工程をすべて中国に移管する計画で投資を進めていた。しかし、その計画を取りやめ同工程の主力を日本国内に戻すことを決めた。
国内製造子会社の合併は、国内で労働者を確保するための手立てでもある。「製造子会社よりも本社であるほうが、働き手にとって訴求力がある。好きな楽器を造りたい、という方々にやりがいのある仕事を提供したい」。中田社長はそのように狙いと抱負を話した。
ヤマハは世界で唯一、吹奏楽やオーケストラで使用される楽器のほぼすべてを自社で製造・販売している。楽器の盟主にとって2024年は大きな変化の年になりそうだ。
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