ヤマハ、「中国ピアノ市場の変調」により曲がり角 2024年は新たな「成長ストーリー」を描き出す年
2021年に発表された「双減政策」の影響を受け、教育向けピアノの需要が減衰している。子どもと保護者の負担軽減を目的とし、学校の宿題と学外教育の時間を減らすことを定めたのが双減政策だが、結果として教育熱を冷ますこととなった。
教育向けピアノ需要の減衰がヤマハに与える影響は大きい。なぜなら、ヤマハの過去10年の収益拡大は、中国の高いピアノ需要を前提とした成長ストーリーだったからだ。
中国では教育熱の高い都市部の富裕層を中心に、アコースティックピアノの需要が強かった。ヤマハは中国市場向けのピアノを現地生産することで利益を最大化できる体制を築いていた。
ヤマハは2012年度からコロナ影響が顕在化する前の2018年度にかけて、営業利益率を2.5%から12.8%まで右肩上がりで高めてきた。この大幅な採算向上には、現地生産、現地消費で採算がよい中国教育市場の拡大が貢献していた。
この間、ヤマハの中国での楽器売り上げは229億円から468億円まで成長。楽器売り上げ全体に占める中国比率も8%から17%に拡大した。
新たな成長ストーリーは
しかし、教育熱が冷めているとなると戦略の変更が必要になる。ヤマハの中田卓也社長は12月末に行われた記者懇親会の場で、中国市場の今後について次のように言及した。
「教育一本足打法から、需要が伸びているエンタメや趣味向けなどへ軸足を移すことで今後の成長を実現したい。ピアノで培ったブランド力でほかの成長も支えられる」
中国市場での地産地消を実現していた製造拠点についても、輸出拠点として活用できるよう手を打つ。
市場はシナリオが崩れることを嫌う。従来のシナリオは、わかりやすく、かつ実績も挙げていただけに、ヤマハは急いで次の成長ストーリーを描き出す必要がある。
「欧米中日以外が成長ドライバーになる。地域の1人あたりGDPが5000ドルを超えると楽器の普及が始まるとみている。新興国でも都市部ではそのような地域が増えている」。中田社長はそのように持論を交えて新市場への期待を語った。
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