「今年こそ投資を始めたい」人が陥る"3つの盲点" 新NISA開始で「投資しないともったいない」の罠

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小説『きみのお金は誰のため』では、大富豪のボスが投資について語るシーンがあります。

ボスは学習支援AIへの投資を例に、投資の真髄を語り始めた。
「彼らの会社には、僕や他の投資家が3億円を投資しているんや。投資に失敗してお金を損するのは僕ら投資家だけの話。その3億円は事業のために働いてくれた人たちに支払われていて、世の中のお金の量は減らへん。社会にとってお金は損失にはならんのや」
優斗は、ビリヤードの話を思い出した。
「払ったお金は必ず誰かが受け取っているんですよね」
「そうや。社会にとってお金はもったいなくない。もったいないのはみんなの労働や。ムダに人材を使うことが社会への罪なんや」
ボスの言葉には熱がこもっていた。
投資した3億円は、会社で働く研究者や、会社で購入する設備を作る人たちに支払われる。総額3億円分の労働が投入されることになる。その金額以上に稼げなければ、彼らの労働の成果が、人々に十分な価値を提供できなかったということだ。
そして、ボスは断言した。
「もうかる見込みがないなら、働いてもらうべきやない」
(中略)
うつむいて話を聞いていた七海が顔を上げた。
「投資の目的は、お金を増やすことだとばかり思っていました。そこまで社会のことを考えていませんでした。大切なのは、どんな社会にしたいのかってことなんですね」
苦笑いで恥ずかしさを隠す彼女に、ボスが優しく声をかける。
「そう思ってくれたんやったら、僕も話した甲斐があったわ。株価が上がるか下がるかをあてて喜んでいる間は、投資家としては三流や。それに、投資しているのはお金だけやない。さっきの2人は、もっと大事なものを投資しているんや」
ボスは七海と優斗を順に見つめてから、ゆっくりと続けた。
「それは、彼らの若い時間や」
優斗の息がつまった。
ボスの言葉に、心臓を強く握られた気がした。自分も全力で何かに取り組めるのだろうかと不安になる。そして、情熱をかける目標を見つけている彼らを、うらやましく思った。
『きみのお金は誰のため』151ページより

新NISAが始まり、今年はますます投資熱が高まりそうです。若い人たちには、投資される側に回って、新しいことに挑戦するには大チャンスです。

投資する側に回る人は、まわりの口車に乗せられて投資バブルに巻き込まれないようにしたほうがいいでしょう。

どちら側に回るにしても、「どうして投資で儲けることができるのか」「どのように投資が社会を成長させるのか」をじっくり考えてから投資を始めることをおすすめします。

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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