オワコン化した従来教育、捨てられる教師の末路 平成の価値観が通用しないZ世代が親になる頃に危機

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし今では、社会がより多様化するなかで、一人ひとりの特性や得意分野を伸ばすことが重視されるようになってきている、そう言ってもいいでしょう。そこで近年、教育のプロセスの指標として「ブルーム・タキソノミー」という分類法が注目されています。

「思考で遊べる授業」へ

ブルーム・タキソノミーとは、1973年にアメリカの認知心理学者ベンジャミン・ブルームの研究チームによって作成されました。その改訂版(2001年版)では図のように、「知識」「理解」に始まり「評価」に至る教育のプロセスが分類されています。

捨てられる教師 AIに駆逐される教師、生き残る教師 (SB新書)
『捨てられる教師 AIに駆逐される教師、生き残る教師』(SB新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

日本の従来の学校教育は、「知識」「理解」「応用」までをカバーしてきました。授けられた知識を正確に理解し、それを応用して物事を推測する能力を身につけさせるところまでが学校教育の役割だった。「右に倣え、前に倣え」式で経済を発展させていた一昔前ならば、それで十分でした。

しかし今は違います。「知識」「理解」「応用」のうえで物事を分類、構造的に理解し、予測を立てる「分析」の能力。そのうえで物事のさまざまな要素を集めてきて編集し、そこから仮説を立てて新しいことを構想し、自分なりの価値観や哲学、信念をもって自己決定を下す「評価」の能力。さらに何かを生み出す「創造」の能力──。

「知識」「理解」「応用」までは正解のある低次思考である一方、「分析」「評価」「創造」は正解のない高次思考です。正解のない問いについて、知識を基に論理的、多角的に迫り、個別・具体的な認知とメタ的・俯瞰的認知を行き来しながら、最終的には自分軸に従って決定を下し、新しい価値などを創造する。

こんなふうに、思考を自由に遊ばせ、新しい価値を創造する能力がなくては、これからの世の中、社会の一員として各々の個性や才能を発揮しながら生き抜いていくことはできないでしょう。

つまり学校教育は、もはや「知識」「理解」「応用」にとどまらず、生徒たちが「分析」「評価」「創造」という基礎体力を身につける手伝いができるよう変化する必要があるのです。

知識を詰め込むだけでなく、知識を基に自由に思考する。低次思考を高次思考につなげ、自分なりに決定を下したり創造したりできる術を教えるということです。

ところが現状、多くの学校教育はいまだに「知識」「理解」「応用」止まりにもかかわらず、社会に出たとたん「分析」「評価」「創造」の能力が求められます。若い人たちからすれば、今までほとんど訓練してこなかったことを急に求められるという理不尽な状況が生まれているわけです。この学校教育と実社会のギャップを、早く埋めなくてはいけません。

石川 一郎 カリキュラムアドバイザー/21世紀型教育機構理事

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしかわ いちろう / Ichiro Ishikawa

1962年東京生まれ。早稲田大学教育学部社会学科地理歴史専修卒業。暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教鞭を執る。前かえつ有明中・高等学校校長。著書に、『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)、『2020年からの教師問題』(KKベストセラーズ/ベスト新書)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事