オワコン化した従来教育、捨てられる教師の末路 平成の価値観が通用しないZ世代が親になる頃に危機

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ともあれ、子どもが減ることは教育事業が縮小することを意味します。特に大きな影響を受けるのは大学でしょう。2022年に生まれた子どもは77万0747人。大学への進学率は平均して60%ほどですから、単純計算で、2022年生まれの子どものうち大学進学するのは約46万人──。

さて、これが何を意味するか、おわかりでしょうか。出生数が100万人を超えていたころは60万人以上が大学進学していたものが、約46万人にまで落ち込む。

すると、医大などの一部の専科大学、東大・京大など難関国立大学、早慶上理、GMARCHの一部の学部までは入試による選抜が機能しても、それ以下の大学は「試験さえ受ければ誰でも入学できる」という事態になるでしょう。

つまり2022年生まれの子どもたちが17年後、高校を卒業する2040年、いわゆる「大学全入時代」が訪れると考えられるのです。それどころか定員割れを起こし、経営不振に陥った結果、自然淘汰される大学も出てくることが考えられます。

(出所)『捨てられる教師』より

学校は深刻な人材不足に陥っている

第2に、学校教師になる人が激減しているという事実があります。学校は、よく「ブラック職場」といわれます。

それもそのはずで、学校教師は、授業のほかに担任、生活指導や進路指導、保護者対応、職員会議、もろもろの書類作成、部活の顧問などなど、とにかく仕事が多いのです。その合間を縫って、担当教科の授業の準備をし、宿題を考え、テストを作り、採点するなどの仕事をこなさなくてはいけません。

それでも、教育に関心がある人ならば教師になるだろう、と思われるかもしれませんが、受け皿は学校だけではありません。テストの点を取らせることに関心がある人には大手予備校や塾、教育の仕組みづくりに関心がある人には教育事業を展開する民間企業に就職するという道があります。

しかも、これらのなかには学校教師よりもずっと高給なところも多く見られます。というわけで、教育に関心があり、かつ就職戦線を勝ち抜ける優秀な人ほど学校教師にならない。

こうして、本来ならば教育の中枢を担う機関であるはずの学校が、いわば人材のエアポケットになってしまっているのです。この事実はまた、日本の学校教育がなかなか根本的に変化しない理由にもなっています。

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