後悔だらけの人生を送っている人が知らない事実 生きることは後悔を重ねることだった

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たとえば、父親の願望を受け入れて大学院を中退してしまった過去を持つバージニア州の52歳の女性は、「大学院の学位を取得すればよかった」という後悔を抱えている。「学位を取得していれば、私の人生の軌跡は違うものになっていたでしょう。もっと満足感と充実感、そして達成感を味わえたはずです」と彼女は打ち明ける。

彼女が後悔するとき、彼女の脳内ではこのようなことが起こっている。まず、何十年も前のまだ若かった頃に立ち戻り、実際に起きたこと(父親の望みに従ったこと)をなかったことにし、それとは別のシナリオを思い描く。そのあと、再びタイムマシンに乗って、過去をつくり変えることで変化した新しい現在へ戻り、満足感と充実感と達成感を味わう。

こうしたタイムトラベルとストーリーテリングの能力は、人間だけがもっている「超能力」と言ってもいいだろう。ほかの動物にはできないであろうこの超能力を、私たち人間は、いとも簡単に活用できる。

このように、後悔のプロセスを牽引するのは、時間旅行をする能力と、過去の出来事を書き換える能力だが、そのプロセスが完了するまでには、さらに2つのステップを経なくてはならない。その2つのステップが後悔とほかのネガティブな感情の違いを生む。

後悔を生み出す2つの能力と2つのステップ

ひとつ目は、比較するステップだ。前出のバージニア州の女性に話を戻すと、この女性がいま悲惨な状態にあるだけであれば、後悔の感情は生まれない。この場合、女性がいだく感情は、悲しみだったり、憂鬱だったり、絶望だったりする。その感情が後悔に転じるのは、タイムマシンに乗って過去に戻り、そのとき別の行動を取っていた場合に実現したと思われる結果と、現在の悲惨な状況を比較したときだ。

もうひとつは、その状況が誰の責任なのかを分析するステップである。人はたいてい、他人の行動ではなく、自分の行動を後悔する。ある有力な研究によると、人々がいだく後悔の約95%は、外的環境ではなく、自分がコントロールできる状況に関わるものだ。

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