《日本激震!私の提言》損失負担と公的資金注入の枠組み作りを急げ--家森信善・名古屋大学大学院教授
まず、実際に発生してしまった損失を、今後、誰がどのように負担するかが問題になる。これはかなり厳しい現実だ。多くの地元企業が多額の損害を被ったはずで、金融機関は債務超過の企業に貸すわけにはいかないため、このままではニューマネーが地元企業には流れなくなるおそれがある。そもそも地元金融機関も多額の損害を受けており、支援をする余力もないかもしれない。
阪神・淡路大震災の後には、それ以前から弱っていた兵庫銀行が破綻した。損失負担の仕方によっては、二次損失、二次破綻が広がる危険性や金融システム不安に発展する可能性もある。地元の金融機関をどうカバーすべきかを、早急に決める必要がある。
次に、被災地域の企業に将来に向けての資金を流すためには、地元金融機関への資本支援が必要だろう。
金融機能強化法には公的資金枠が11兆円も残っているが、これは健全な金融機関への資本注入ということになっているので、被災地域へ公的資金が注入できるような特別な手当てが求められる。金融機関を助けるというのではなく、金融機能を残さなくてはならないという発想だ。地元の金融機関を“生きたまま”残すのが基本だが、周辺の健全な金融機関との合併や受け皿機関を作るなどの工夫も考えるべきだろう。
金融機関の建物や通帳なども流され、多くの人が亡くなっているような状況の中では、全国の金融機関が被災地の金融機関の業務を支援することが不可欠だ。顧客企業との接点は地元の金融機関しか持っていないので、融資判断には地元の行員のほか、退職した元行員も動員する。一方、バックオフィスの業務には、全国の金融機関や中央機関から人材を応援に出すべきではないか。
また、多くの建物が流されて、区画整理や担保の扱いなど法的な問題が多発する。これにも阪神・淡路大震災でノウハウを持つ人たちや公的機関からの動員が有効だろう。