《日本激震!私の提言》損失負担と公的資金注入の枠組み作りを急げ--家森信善・名古屋大学大学院教授

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被災地支援の投融資へ金融技術を生かせ

--もともと地方では、中小企業の体力が弱っていたという事情がある。金融機関にはどのような融資姿勢が求められるのか。

確かに、もともと弱っていた企業を延命させて最終的に潰れてしまうのでは意味がない。当然、返済のプランが必要で、個別の企業経営者の意欲や再生のプランを判断する地元金融機関のノウハウが重要になってくる。だが、その前にまず、企業が安心して投融資に取り組めるように、国が復興のプランニングを急ぐべきだ。

また、こういうときこそ、金融技術上の工夫を凝らしてほしい。

資金繰り支援というと資金量と金利に注目が集まりがちだが、ここから数年は、収入が大幅に減少する企業も多いので、適切なモニタリングをするという条件で、やや長期にわたる元本の据え置きも必要だ。

また、担保もなく中長期の設備資金を手当てしようとすれば、銀行融資だけでは限界があるので、エクイティ型の資金供給も重要になる。ゼロ金利で預金している人や義援金を送る人がたくさんいるのだから、「頑張れ東北ファンド」のような形で、リターンは高くないが復興によって資金をきちんと回収できるというような商品設計をして、一般に売り出すことも考えられる。

金融技術というと、サブプライムローン問題ですっかり悪者になった感があるが、メガバンクなど大手金融機関などは被災地域の金融を支援するさまざまなアイデアを提供して、名誉を挽回してほしい。

--結果的に、日本の不良債権問題、リーマンショック、今回の大震災で、公的金融の肥大化が続く。

これほど大規模な災害なのでやむをえない。ここは地元金融機関のノウハウを最大限に活用するべきだ。継続的な訪問でモラルハザードを防ぐ意味でも大切だ。公的機関はどうしても一律の判断をしがちだ。出口戦略を考えるうえでも、被災地の金融機関の体力をリスクの取れる形に戻していくことがより重要で、公的資金の注入は必要な手段だ。

やもり・のぶよし
1963年生まれ。86年滋賀大学経済学部卒業、88年神戸大学大学院経済学研究科博士前期課程修了、96年名古屋大学助教授、2004年名古屋大学大学院経済学研究科教授(現任)、経済学博士。現在、金融審議会委員、金融庁・金融機能強化審査委員会委員

(週刊東洋経済2011年4月23日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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