《日本激震!私の提言》損失負担と公的資金注入の枠組み作りを急げ--家森信善・名古屋大学大学院教授

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《日本激震!私の提言》損失負担と公的資金注入の枠組み作りを急げ--家森信善・名古屋大学大学院教授

--震災後、公的機関による融資や保証延長などの措置が相次いで取られた。それに対する評価は。

今回の措置は適切だったと思う。緊急の対応として、災害が原因で不渡りとなった手形・小切手の不渡り処分の猶予や、既往債権の返済の猶予、貸し付け条件の変更などは不可欠だ。円滑化法の延長についても、各金融機関は言われなくても必要な対応をすると思うので、確認にすぎない面もあるが、国の政策として明確化することで、この局面では安心感が出る。1カ月間を乗り越えられたという点では評価できる。

考えてみれば、これだけの規模の大震災が発生して、みずほ銀行のシステムトラブルにより給与振り込みが受けられないという問題まで発生したのに、取り付け騒ぎも起きず、全体として見れば金融機能は円滑に機能している。1990年代の不良債権問題以降、法や制度の整備が進み、日本の金融システムは格段に強化されたと感じている。

金融庁の検査マニュアルの特例措置も、融資先企業の赤字や延滞が「震災による一過性のもの」と判断された場合には債務者区分の引き下げを行わなくてもよいとしたことや、実態把握が困難な債務者や再評価が困難な担保物件については「注記」するとしたことは、いずれも妥当だと考える。被害が発生したことを隠したり、見ぬふりをすることはあってはならないので、開示をしたうえで、平常時とは違う行政判断を行うことはありうる。ただ、市場や預金者が特別扱いをするかどうかは別問題なので、資本注入の枠組みやほかの健全金融機関との合併などの仕組み作りを急ぐべきだ。

地元金融の再建に全国から人材支援を

--ここから先の課題は。

現状は、とりあえず流動性を供給して問題を先送りしたというだけだ。損失負担と将来に向けての資金供給という、大きな課題がある。

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