サマンサタバサ「冬季賞与なし」が物語る"窮地" 従業員のボーナスを払っている場合ではない状況

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なかなかうまくいかない状況が続いているが、同社のこれからを見守りたい。

ボーナス不支給で「社員流出」も起きる?

ところで、話は変わるようだが、先月11月に公正取引委員会は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」というおそるべき内容を発表した。

これは企業間取引において、労務費の上昇を、なかば強引に認めさせるものだ。強引、が言いすぎであれば、半強制力をもって、取引相手に承認させる手引だ。

大手企業が中小企業と取引をしているとする。そのとき、これまでの慣例であれば、中小の労務費アップなど、大企業相手の価格に反映できなかった。大企業は「賃金をアップさせてもいいけれど、それはそっちの都合だから、価格に反映させないでよ」という態度だった。

しかし、それでは中小企業の人材確保は難しいし、日本全体の賃金アップは見込めない。だから公正取引委員会は賃金アップを図ろうとする。

また、私は現場のコンサルタントだが、実際に、大企業にたいして中小企業が「従業員にボーナスを払いたいから、対価を引き上げられないか」と相談する事例が多々ある。

現在、人手不足は深刻化しており、従業員にたいしていかに訴求性を上げるかが事業活動そのものの継続につながっているのだ。

サマンサタバサは中小企業ではない。大企業だ。だから、中小企業と同じだ、といいたいわけではない。また、お金だけが従業員のモチベーションではないだろう。

しかし、人手不足が過熱し、さらに賞与を不支給とすれば、従業員のモチベーションダウンにつながるだけではなく、退職の引き金を引きかねない。

まさに、チャレンジングな状況で、どれだけ働きがいのある仕事を提供できるかにかかっているだろう。この点についても注目していきたい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。著書も多数。

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