ひろゆきに憧れ「論破」しがちな人の残念な盲点 「論破なんてやたらめったらやるもんじゃない」

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:「たとえばおいらがとくに困るのは『あるテーマに対して筋違いなことを延々話し続けてしまう人』とか『ウソをついてしまう人』です。こういう人がいると、会議で毎回時間がムダになったり、ウソにもとづいて議論が誤った方向に進み続けてしまったりします。しかもウソをつく人は意外と頭が回ったりするので、厄介ですよね?」

:「確かに、その点は同意します。哲学の論理学では、前提条件が間違っている、つまりウソだと、結論も間違ってしまうことが示されていますし……。プログラミングにも関わる考え方ですね。」

KEYWORD 論理学
物事を論理的に考えるための哲学。アリストテレスが形式論理学を体系化し、現代では記号論理学として発展した。記号論理をプログラムに変換して、AIに応用するという試みもなされている。

:「じゃあどうすればウソつきにだまされずに済むかというと、細かいところまで追求することが必要になってきます。また筋違いなことを話し続ける人に対しては、『この人がしゃべると毎回時間かかるなぁ』と認識してもらうために、詰めることもあります。こういうテクニックが、世間で『論破』といわれるモノなのかもしれません。」

:「なるほど。でも……それってけっこう、その後に影響しませんかね。実生活で論破なんてしようものなら、周囲に嫌われてしまうかもしれません。相手との関係性がこじれて、かえって物事が進みづらくなることだってあるんじゃないですか?」

優秀なセラピストを例に「議論」を考えると

:「まぁ、おいらはあまり人に嫌われるかどうかは気にはならないんですが……。かえってこじれるのではというのは一理あるかもしれません。だからこそ、めったにやるもんじゃないんです。一部の例外を除けば『論破しようとする時点で二流』といえるかもしれません。おいらはよく、セラピストの例えを出すんですがね……。哲学マニアさんは、優秀なセラピストってどんな人だと思います?」

:「セラピスト? 急な話ですね……。まぁ、親身になって処置してくれるとか、そんな感じじゃないでしょうか。」

:「そう、多くの人は『毎回親身に相談に乗って悪い所を指摘し、それを治す方法を示す人』──みたいな回答だと思います。でもおいらは、本当に優秀なセラピストというのは『お客さんも気づかないうちにいつの間にか処置をしていて、まるで本人は、最初からなんともなかったかのように思わせてしまう人』だと思うんです。」

:「それが今回の話とどのように関係するのでしょうか?」

:「つまりですね、議論も同じなんですよ。正面切って批判するのではなく、自分のもっていきたい方向につながるよう、相手に必要な情報と判断基準をこっそり提供しておくんです。それで、あたかも相手が『自分からその結論に気づいた』かのように思わせてしまう──これが最も綺麗な方法ですね。」

:「それは確かにいいかも……。でもある意味、『論破というのはやたらやるべきではない』というのは共通見解のようですね。」

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