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オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』佐々木 孝 訳/岩波文庫
オルテガの言う「大衆」は社会階層ではない。「典型的な『大衆』とみなされてきた労働者集団の中に、陶冶を受けた高貴な魂を見出すことも、さして珍しいことではなくなった」。現代においてはむしろ、貴族階級のように選ばれたとされる少数者、特別な能力を持っていると見なされてるエリートたちの中に、精神的失格者、あるいは「似非(えせ)知識人」と呼ぶほかない人、つまり「大衆」が増えているのだ。オルテガは時代風潮をそう批判している。
「大衆」と「貴族」
社会権力の前面に出てきたとしてオルテガが批判する「大衆」は、中下層階級ではなく、むしろ社会の上位集団として位置づけられている「技師、医者、財界人、教授」らエリート、すなわちテクノクラート、専門家集団に多く見られる。本書では「科学者」という言葉が使われているが、「専門家」と言い換えれば、わかりやすそうだ。そう、テレビなどによく登場するあの「専門家」である。
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