「糖尿病で失明」知るとゾッとする合併症の正体 世界的眼科医が「薬物治療主体」に異論唱える訳

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目の中で出血すると炎症反応が起き、増殖膜が張ってきます。増殖膜は収縮することで網膜を破き、網膜剥離を起こして、失明につながるのです。

増殖膜による網膜剥離が起きた場合、長い間放置していると、新生血管や網膜下の増殖膜などが起きてくるので、硝子体手術で網膜剥離を治すことが困難になります。さらには、血管新生緑内障など重症緑内障の合併症を併発することも多いのです。血管新生緑内障とは、糖尿病により新生血管が、目の水(房水)の流れる隅角・線維柱帯部分に伸びて、そこに膜が張り眼圧が上昇する、重症の難治性緑内障です。

(画像:『100年視力』より)

私は数万件の網膜剥離の手術をしていますが、この強い増殖膜や新生血管が起きた網膜剥離は、とくに難治症例です。

しかし、糖尿病関係の目の疾患は早く見つければ治せます。目の疾患の治療の原則である、早期発見・早期治療が重要なのです。

もっとも重要な治療は、糖質をとりすぎない食事です。糖質の多い主食を食べないようにする「糖質制限食」が、糖尿病予防や糖尿病患者さんの効果的な治療になります。ブドウ糖の10倍以上の速さで「糖化」を進める果糖の摂取もNG。食べるものは栄養成分表示をチェックして選び、とくに人工的につくった果糖である「異性化糖」「果糖液糖」「果糖ブドウ糖液糖」と表示にあれば摂取をやめましょう。

さらに、高温での焦げ目のついた調理は終末糖化産物(AGEs)を増やします。蒸したり煮たりの調理法を主として、加熱でも低温調理器具を使うと良いでしょう。

「眼底検査」で見つかることも多い糖尿病

目の異常を訴えて病院に来た患者さんの眼底検査をして、糖尿病性網膜症を発見することがよくあります。つまり、自覚していなかった糖尿病が見つかるのです。

人の体で直接、血管を観察できるのは、眼底の網膜だけなのです。ほかのどの診療科でも血管を直接は診察することはありませんが、私たち眼科外科医は日々、患者さんの目の中をのぞき、血管を見ています。眼科の最高峰のツアイス手術顕微鏡で見ると、20倍にも拡大した鮮明な像で血管を見ることができます。

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