ラピダスと「天才の半導体ベンチャー」提携の裏側 伝説のエンジニア率いるテンストレントとは

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GPUは、AI処理を行うためにCPU(中央演算処理装置)と組み合わせて使われている。

ただ性能をもっとも効率的に引き出すためには、CPUとGPU、さらに計算情報をやり取りするためのメモリーの機能が1つのチップに収まっているような構造が理想だ。テンストレントは、こうした理想のAIチップの開発を目指している。

テンストレントの日本法人社長である中野守氏は、「ケラー氏や創業者たちは、この世の中のITはいずれすべてAIベースになると思っている」と話す。いろいろな顧客が求める機能のAI半導体をデザインして提供することがテンストレントのビジネスだ。

ラピダスとの接点はどのように生まれたのか。きっかけは、中野氏による今年1月の日本法人立ち上げだった。

2022年の終わり頃、イギリスのAI用コンピューター開発企業の日本法人社長を務めていた中野氏が、日本法人の設立をテンストレントのカナダ本社に提案。当初、本社側は日本市場参入に否定的だったというが、中野氏が策定した日本でのビジネスプランをみて参入を決めた。

ラピダス社長と面会し意気投合

設立段階ではラピダスや経済産業省との連携は想定していなかったという。だが、「AI半導体の開発を目指している日本の企業や研究機関からテンストレントに声がかかり具体的な話が進んでいく中で、5~6月頃に半導体政策を強化したい経産省とつながることになった」(中野氏)。

AI半導体の開発を軸に経産省とつながりを持った後は早かった。今年7月、ラピダス側からテンストレントへ連絡があり、すぐにラピダスの小池淳義社長とケラー氏が面会。その場で両者は「スピード重視」という点で意気投合したという。

「これまで交渉したほとんどの日本企業で、『検討します』と言われてきた。ケラー氏は『2回その言葉が出てきた時点で時間がもったいないから次にいこう』と言っていた。そういう中でラピダスのスピード感は魅力的だった」。中野氏はそう振り返る。

テンストレントの製品の製造は現在、台湾のTSMC、韓国のサムスンなど複数のファウンドリーに委託している。だが、半導体の微細化が今後さらに進むと、製造できるファウンドリーは限定されてくる。調達という点で特定ファウンドリーへの依存度が高まってしまう。

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