――就職難の象徴とされているのが、修習修了直後の一斉登録時に、裁判官にも検察官にもならず弁護士登録もしていない人数が増えているという点です。2014年12月に修習を終えた67期は550人で、約2000人の修習修了者の3割弱にあたる人数でした。
今は修習期間が1年しかなく、2回試験(司法修習の修了考査)が終わって11月下旬から就活を始める人も多い。そもそも一斉登録時に登録しても、 12月中の実働日数は数日しかないのに、弁護士会費はまるまる1カ月分かかるので、1月登録にさせる事務所もあるし、企業や官庁へ行く人だと4月登録という 人もいる。
修習修了から2カ月後の時点で進路が決まっていないのは、全体の3%程度でしかない。これで「就職難だから法曹人口を減らせ」というのは、司法の重要性を理解していない。
制度を歪めているのは現在の試験の在り方
――司法修習も廃止すべきだとお考えですね。
もともとは 3000人の試験合格者を和光市の研修所では収容しきれないというところから話が始まり、7割受かるから法科大学院で司法修習の前期修習を担う設計になっ ている。修習を法科大学院教育に一本化すれば、卒業後司法試験に受かったらすぐに実務に就ける。
司法試験に受かりもしないうちから受かったあとのための教育を受けてもムダだという声があるのは承知しているが、それは2割しか受からない試験制度の方に問題がある。
第一、いまの修習は裁判官の養成を主眼にした もので、弁護士の養成には向かない。そもそも裁判官採用者数は100人(全体の5%)から増えていない。修習費が給費制から貸与制になり、それが新人が背負う負債 を増やしているという問題も、修習を止めてしまえば問題自体がなくなる。
――裁判官、検察官との統一修習は、戦前、裁判官や検察官よりも低い地位にあった弁護士の地位が、戦後は同じ地位に格上げされたことの象徴だったのでは?
既に役割を終えている。合格者の9割が弁護士になる以上、修習を止めても弁護士の地位は変わらない。
――予備試験については?
医科大学教育抜きの医師国家試験なんて考えられますか?
――合格者数を増やすと質が落ちるという意見があります。
何をもって質を計るのかという問題がある。法務省には司法試験合格者の4割が任官した時代の合格者イメージがある。合格ラインすれすれの人に関しては「質が落ちた」という感覚はあるのだろう。
ただ、司法試験の問題にしろ実施の方法にしろ、弁護士の実務に必要な資質を問うものになっていない。現実の弁 護士実務では司法試験に出るような法理論が必要になることはまずないし、その場合でも判例や六法を見ながらじっくり検討する。試験は暗記力や暗記した内容を短時間で吐き出す事務処理能力を見ているにすぎない。だから思い切って3000人受からせてやれと言いたい。
※ 「削減派」の宇都宮健児弁護士インタビューはこちら。
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