弁護士のニーズは「供給」によって増大する 弁護士「削減派vs増員派」、両巨頭の見解<下>

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新司法試験制度の第一期生(60期)が法曹デビューしてから7年。学生の募集を停止する法科大学院が相次ぎ、制度は曲がり角を迎えている。
法曹志望者を増やさなければならないという点では意見が一致しながらも、司法試験制度を含め、法曹養成に関する意見は弁護士の間でも大きく分かれる。
今回は合格者数を「1500人前後まで削減すべき」という主張を展開している、日本弁護士連合会前会長の宇都宮健児氏と、「当初計画通り3000人とすべき」と主張する久保利英明弁護士に話を聞いた。
今日は後編、「増員派」の久保利弁護士のインタビューをお送りする。
※ 「削減派」の宇都宮健児弁護士インタビューはこちら

 

知り合いに弁護士がいるという人はまれ

――弁護士はまだまだ足りないというご主張ですね。

弁護士は今、約3万 5000人いるが、これは国民3400人に一人という割合だ。実際今でも「知り合いに弁護士がいる」という人は少ない。突飛な例えかもしれないが、100 歳以上の高齢者は今、日本には6万人近くいるのに、私のまわりにはいない。一般人にとって知り合いに弁護士がいる確率はもっと少ないことになる。

――合格者数を減らすべきだと主張している人たちは、ニーズもないところに増やすべきではないと言っています。

企業法務のニーズは中堅以下の規模の企業にまでかなり増えている。以前なら上場会社に限らず企業全般に、なんでも内々に済ませようとする傾向があったが、今は変わった。コンプライアンスがうるさく言われるようになり、透明性を確保するために、訴訟ではなくても法律家の交渉によるケースが増えている。

法務部が力もつけ、得手不得 手や報酬水準、使い勝手などで弁護士事務所を使い分けることは常識になっている。

大事務所は以前のように楽には稼げなくなっているが、企業法務を扱う中小規模の事務所の仕事量は増えている。個人の領域でも開拓の余地はまだまだ大きい。現に、弁護士がいない町に即独で事務所を構えたら大盛況、という事例はいくつもある。弁護士は裁判所の近くに事務所を構えるが、市民は裁判所がない地域にも住んでいる、ということだ。

――ニーズがないと思われていたところに、事務所を出してみたらニーズがあったと。

アップルのスティーブ・ジョブズの名言に「消費者は欲しいものを知らない」というのがある。スマホは消費者が欲しいと言ったから誕生したのではな く、まさに供給が需要を生んだ。

弁護士も同じ。消費者は自分に起きている問題が弁護士を必要としている問題なのか、そもそも法律問題なのかすらわからない。そういう人に、いくらニーズに関するアンケートをとったところで無意味だ。

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