実は、数年前に施設の建設案が持ち上がったタイミングで、「意外な人物」らがそのコンセプトに賛同し、異例の出資を行った。
それは、日本でも往年のファンが多いモータースポーツ業界のレジェンド2人、キミ・ライコネン(元F1ドライバー)とトミ・マキネン(元ラリードライバー)だ。両者とも家族の別荘が近隣にあったので、この地域には以前から縁があった。
だが、現役時代からさまざまな日本文化に精通し、屈指の日本びいきとして知られる彼らがこのリゾートホテルに注目した理由のひとつは、ホテルのスパセクションに「日本人の入浴エッセンス」が多分に取り入れられていることにある。
「日本の入浴法」といえば、ONSENと◯◯浴!?
パノラマの敷地内には、宿泊客はもちろん、予約をすれば外部客も利用可能なスパセクション「メッツァキュルプラ・ラハデ(Metsäkylpylä Lähde)」があり、その斬新さやエキゾチックさが話題を呼んでいる。
フィンランドなのでサウナがあるのは当然なのだが、3つの異なる趣向のサウナに加えて、室内外になんと計5つの浴槽がある。うち1面は天然水の強冷水風呂で、あとは40度の湯が張られているのだ。
スパの名前は、フィンランド語で「フォレスト・スパ 泉」という意味。日本らしい入浴文化として多くのフィンランド人が思い浮かべる「森林浴」と「温泉浴」という2大入浴文化への憧憬がこめられたネーミングだ。
「森林浴」は、当の日本人からすれば「それは入浴のタイプなのか……?」と首を傾げるかもしれない。
だが、以前からフィンランドをはじめ欧米諸国では、日本発祥の森林浴という語が「Forest bath」と訳され、メディアでも、さも一種の入浴法のように紹介される。
とくに、ウェルビーイングへの関心の高まりとともに、森林内環境で清浄な空気を浴びることは、心身に健康と安らぎをもたらす……つまり、入浴全般と同様の療養効果が得られる、と評価し実践する人が増えているのだ。
『「最新医学エビデンス」と「最高の入浴法」がいっきにわかる!究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏(サウナ・フロム・フィンランド協会会長)も、本書内でサウナと森林浴の相性の良さを説き、サウナで思考をリセットして五感を研ぎ澄ますためのトレーニング法として、入浴前に20分ほど森林浴を行うことを推奨している。
広報担当のユーソ・ホルステインによれば、このスパやホテル全体が、利用者がさまざまな視線や感覚器を駆使し、フィンランドの誇る清らかで美しい森の恵みを味わえるよう、設計が工夫されているという。
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