ただし、北九州市の産業では、製鉄、化学、セメントを筆頭として“熱”が必須の素材型産業が多い。脱炭素化に向けて電化を進めるには、その規模から技術的なハードルが高いといえる。
そのため、北九州市は既存の電力部門の脱炭素化と非電力部門での電化を進めつつ、高温の熱を必要とする分野には、水素を活用することを目指すとしている。
北九州市にとって水素活用は、街の脱炭素化と次世代化に向けた必須の課題なのだ。
北九州市 環境局・グリーン成長推進部は「日本が2050年までのカーボンニュートラルを表明したことによって、北九州市の(行政としての意識や市に対する)周辺からの見方が大きく変わった」と指摘する。
また北九州市は、国の表明後いち早く、「2050年のゼロカーボンシティ宣言」を打ち出し、さらに具体的な施策を進めるための「北九州市地球温暖化対策実行計画」を改定。2022年2月には「北九州市グリーン成長戦略」を示し、その中で「水素供給・利活用拠点都市」として北九州市を位置づけた。
環境と経済の好循環、それがGX
ここでのポイントは、やはり「環境と経済の好循環」だ。
そのうえで、GXによって「製鉄の街」から「グリーン成長の街」へと転換し、未来に向けて産業競争力の強化や新たな産業集積を図る中で、九州電力、トヨタ自動車九州、西部ガスなど、地元大手企業とカーボンニュートラルに係わるプロジェクトで連携を強化する流れも出てきた。
環境局・グリーン成長推進部は「カーボンニュートラルの実現は、環境と経済の好循環であり、それがGXそのものだ」という認識を深めているところだ。
では、北九州市が必要とする水素は、どのように調達するのか。
まずは「地産地消」による水素製造を目指しつつ、その先では「海外からの輸入」も視野に入れるという。
現在、北九州市は福岡県や地元企業と連携して設立した「福岡県水素拠点化推進協議会」を軸に、響灘臨海部を中心とした水素拠点形成の議論を進めている。2023年5月11日に行われた第1回総会には、水素拠点を活用したサプライチェーン構築に賛同・推進する企業として、22社が参加した。
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