北九州市が「水素に積極的」になる歴史的必然 日本最大級「洋上風力発電」2025年に稼働予定

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行政、事業者、そして市民による精力的な活動を進めた結果、1980年代半ばには街の雰囲気と市民の街に対する意識は大きく変わった。その後、北九州市の環境政策は、公害対策から快適な都市環境の創造に重きを置くようになっていく。

JR小情報サービス企業ゼン倉駅近く、ゼンリンのミュージアムから見た戸畑区方面(筆者撮影)
JR小倉駅近く、地図情報サービス企業ゼンリンのミュージアムから見た戸畑区方面(筆者撮影)

1990年代後半になると、工場地域や市街地で発生する大量の廃棄物をゼロにするという、“資源循環”の観点がこれに加わり、1997年には国から全国初の「エコタウン」承認を受けている。

このあたりから、近年でいう“環境と経済の好循環”に向けた市”としての意識のベースが、徐々にできたのではないだろうか。つまり、「環境保全と経済発展のバランスをうまく取る」という概念だ。

さらに2000年代後半になると、温室効果ガス削減が重視されるようになり、国から全国5都市とともに、北九州市が「環境モデル都市」に第1号選定を受ける。

若松区にある、北九州エコタウンセンター(筆者撮影)
若松区にある、北九州市エコタウンセンター(筆者撮影)

そして、現在まで続く大きな“世の中のうねり”が生まれる。COP21(国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議)での「パリ条約」を転機に、SDGs(持続可能な開発目標)、またカーボンニュートラルがグローバルで大きな影響を及ぼすようになった。

このように、北九州市は1960年代からこれまで、「工業都市という地域性」を踏まえて、街の次世代化を進めてきたと言えるだろう。

工業都市ならではの現実と道筋

「工業都市という地域性」では、ほかの中~大規模都市と比べて、カーボンニュートラルを目指すうえでの方策も変わってくる。ここが、北九州市の特徴である。

ポイントは、産業部門から排出されるCO2(二酸化炭素)の多さだ。

国立環境研究所によれば、全国の温室効果ガス(CO2換算)排出量は、2020年で11.5億トン。内訳は、産業部門31%、次いで運輸部門16%、業務部門16%、家庭部門15%と続く。

GHG(温室効果ガス)排出量の部門別割合(北九州市ホームページより)
GHG(温室効果ガス)排出量の部門別割合(北九州市ホームページより)

一方で、北九州市の同年実績は1313万トンで、そのうち産業部門が60%と全国データの約2倍と、かなり高い。次いで、運輸部門12%、業務部門8%、そして家庭部門は全国データの半分以下の6%にとどまる。

つまり、産業部門での脱炭素化に重点を置くことが、北九州市にとってカーボンニュートラルに向けて重要なのだ。

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