「親に合わせる」が癖になった子が将来背負うもの 子ども時代の心の痛みは大人になっても残る

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「子どもの調子に親が合わせる」という働きかけが家庭の基盤となっていることが大切です。しかしながら、親が子どもの気持ちにお構いなしに自分の気持ちを爆発させていたり、子どもの心身の具合にほとんど関心を払わなかったりという状況であった……ということが少なくありません。

このような環境では、親が子どもの調子に合わせるより、「子どもが親に合わせることのほうが日常であった」という親子の役割が逆転した状態になっていたと言えます。

このような環境であると、子ども側は心に傷を負ってしまいます。それは、大人の負の感情は、子どもが抱えきれるものではないからです。

そのため、親が不機嫌であるなど、負の感情を子どもに向けることが多かったら、親自身が感じている以上に子どもには脅威として響きます。時には、子ども側の健康を損なってしまうこともあるほどです。

それでも、選択肢のない子どもは、懸命に親に適応するために「合わせよう」とし、子どもは自分のことより親の悲しさや不機嫌さを受け止めて、親のために対処する日々を重ねていきます。

子どものころ自分の気持ちを感じる余地を与えられないまま、親のストレスに心を痛める日々を過ごすと、大人になってふと気づくと「自分の気持ちはよくわからないけれど、親の気持ちばかり考えている」という心情につながっていることがあります。

こうなると、いざ親から距離を取ろうと思っても、親の心中を思うとあまりに心が痛み、上手に距離を取れなくなることがあります。

今の“心の痛み”は子どものころのもの

大人になった今でも、このような親の心情をおもんぱかるときに起きる“心の痛み”があったら、「親のつらさが想像されて苦しい」と捉えるのはやめてみましょう。

代わりに、「まだ子どもだったころに、大人である親の気持ちまで受け止めていたのだ。それは子どもが負うにはあまりに負担が大きかったから、今でも似たような状況になると当時の自分が蘇るのかも」と受け止めてみてください。

つまり、親の痛みに意識を向けるのではなく、今まさに心が痛んでいる自分に思いを寄せてみるのです。

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