「親に合わせる」が癖になった子が将来背負うもの 子ども時代の心の痛みは大人になっても残る

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成長の過程で、身体が発達していくように、感情も発達していきます。

私たちの感情は「快か不快か」といった未分化な状態から、「嬉しい」「楽しい」「悲しい」など、さまざまな心理状態を体験できるように豊かになっていくのです。

このように感情が耕されるためには、親からの関わりで“安心感”を得ながら、親を通して自分の感情を知っていく過程を経ることが必要になります。

子どもの健全な発達のためには、「養育者が子どもに合わせながら調子を整えてあげることを繰り返していく過程」が非常に重要であるとされています。

具体的には、「ぐずっている子を親が抱っこしてなだめる」といった身体的な調整から、「怖かったね」「どう思う?」などの気持ちの言語化を助けるものまで、感情は“聞かれて”“呼応されて”耕されていきます。

そのような体験の積み重ねによって、私たちは自分で自分の気持ちが理解できるようになっていきます。そして、お互いに感情が伝わり合うからこそ、親の優しさや温かさが子どもを落ち着かせることになります。

親の感情は子どもに移る

一方で、親が子どもに合わせるのではなく、子どもが親に合わせるという作用も起きます。

親が子どもの状態を本人以上に心配することがあることと同じように、親の心の状態が子どもに伝播することも多々生じています。

親が悲しそうにしていたら、子どもは親以上にいたたまれない気持ちになったり、親が誰かに怒っていたら、その対象を子どもも嫌ったりするようになります。

程度の差はあれ、私たちは成長過程で親と感情を共にするものです。

そのような一心同体の状態から、子どもの成長と共に、子ども側だけでなく親側も「相手の気持ちや思考は自分とは別のもの」と区別していけるようになっていきます。

次ページ「子が親に合わせる」という役割の逆転現象
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