月12万の生活費、都内新築→団地に越した人の生活 おひとりさま女性2人の"至高のわが家"を拝見

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一度は、団地への移住を見送ろうと決めたきんのさん。しかし、それでスッキリした気持ちにはならなかった。

モヤモヤと心の中を渦巻いたのは、母のSOSに応えられない娘としての不甲斐なさ。自分の生活を守るか、母をサポートするか、心が押しつぶされそうになった。

「どうにもならない状況にぶつかった時、人って本当に叫びたくなるものなんですね。気づいたら部屋の片隅で言葉にならない感情を大声で吐き出していました。

でも、そうやって苦しい気持ちを全部出し切ったら、何をいちばん大切にすべきか、少しずつ冷静に考えられるようになりました。自分の生活を優先してこのまま母を見捨ててしまったら、自分のことを一生許せないんじゃないかなと」

今の生活を手放して母の元へ行くのは苦労が多いけれど、母と苦労だけじゃないものを一緒につくることもできるはず。メリットとデメリットを整理して、母親のために団地へ移り住む決断をした。

「都会のマンションで暮らす老後は手に入れられないけれど、自分が満足して生きられる老後は、どこにいても手に入れられるはず。もちろん、団地でも。ポジティブに新しい方向に歩き出すことにしたのです」

ソファもラグも置かず、広々とした空間に。掃除もしやすく快適(写真:週刊女性PRIME編集部)

明るい壁紙の部屋が生きるパワーをくれた

母親のため、前向きに団地へ引っ越しを決めたものの、やはり新築マンションからの落差は想像以上。そのショックは大きかったと、きんのさんは当時を振り返る。

ダイニングキッチンは、料理だけでなく、洗濯、掃除、事務処理もできる自分のコックピット(写真:週刊女性PRIME編集部)

「実際に部屋を訪れると、壁紙は剥がれて床も天井もボロボロでカビだらけ。涙が出そうでした」

それでも、落ち込んでばかりではいられない。団地で母親の介護をしていくと決めたのだから、せめて“心が元気になるような部屋にしよう”とリノベーションを始めた。

「例えば、キッチンは黄色、トイレは青色など、壁紙には明るい色を選びました。毎日過ごす部屋だからこそ、色からパワーをもらえるんじゃないかと思ったのです」

もともと3DKだった間取りは、使いやすさを重視した1LDKに変更し、部屋全体に日の光が入る明るい空間にした。

一方で、ネット通販で購入したシートを寝室の床に張るなど、できるところは自分で作業。「お金が本当になかったから」と話すきんのさんだが、そのDIYの過程が思いがけず楽しいものとなり、部屋への愛着を育んだ。

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