日本の復興支援に、成熟した中国の市民社会の力を活用しよう
東日本大震災発生後、海外から日本への訪問者数は激減している。独立行政法人「日本政府観光局」の発表によると4月に日本を訪れた外国人旅行者数は、前年同月比62.5%減の29万5000人で単月の減少率は過去最大だった。安全・安心が前提となる外国旅行において、決定的なダメージを受けているということだろう。
近年、アジア諸国の人たちの間で日本旅行はブームだった。中でも中国、韓国、台湾からの訪問者は訪日外国人総数の過半数を占めていた。しかし、震災後はこれらの国・地域からの訪問者も激減している。
訪日外国人が減少するということは、外貨収入が減るだけでなく日本を理解してもらう機会も減ってしまうということである。このままにしておくと日本が世界から「見捨てられる」ことにもつながりかねない。
筆者は1カ月ほど前に中国・上海に招かれ、東日本大震災後の日本の現状について、チャリティ講演を2回行ってきた。
1つは市民社会向けのもので、もう1つは企業人向けのものだった。講演に参加した中国の人たちは、「日本の震災復興のために、自分たちもぜひ何かやりたい」という熱い気持ちを持っている。しかし、実際には「中国にいながら得られる情報は限られるため、どこに問い合わせて、どのような支援をしたらよいのかわからない」ということだった。
参加者の中には、中国の床材メーカーの担当者で、今回の講演のために飛行機で広州から上海にやってきた人もいた。「日本の被災者たちは、住宅を失っている人が多いと聞いて何かできることはないかと思いやってきた。中国から日本の状況について得られる情報は少なく被災地の事情がよくわからない」と切実に語った。
また、外資系会計事務所に勤務しつつ、プライベートで孤児の職業訓練のNPO活動をしているという若い女性も参加してくれた。彼女は「孤児に製パンの職業訓練の機会を作り、外資系ホテルに就業するルートを作っている。うちの団体でも日本の震災孤児を受け入れることが可能だが、どこに問い合わせていいかわからない。少しでも情報を得たいと思い参加した」と話した。