日本の復興支援に、成熟した中国の市民社会の力を活用しよう
四川大地震が発生した2008年は中国で「ボランティア元年」と呼ばれている。日本で阪神・淡路大震災の1995年が「ボランティア元年」となったのと同様だ。中国は急激な経済成長に伴い貧富の差が拡大した結果、社会の不均衡も増大した。
これに対して政府の手が回らないことから、「市民たちができることは自分たちの力で解決していこう」という機運が高まっている。着実に市民社会が育っているのだ。
さて、外国からの訪日人数を増やし、日本が経済面でも復興を加速できるために何かできることはないか。そのヒントが04年のスマトラ沖地震で深刻な津波被害を受けたスリランカにある。筆者は、津波から約1年半後の06年5月にスリランカで開催されたある国際会議に参加するため現地を訪問した。
当時のスリランカは支援物資の争奪戦が起こり、北部では内戦が激化していた。ところが、こうした混乱期にもかかわらず、この国際会議と同時期に発表されたスリランカ・ツーリスト・ボードの調査によれば、外国人観光客は前年同期比で27.5%も増えていた。
この理由の1つが隣国のインドから特別に割り引かれた航空券が発売されたことだ。割引を利用して観光客が増加したのだ。
もう1つがイギリスやドイツなどからの被災孤児支援等のボランティア活動を組み込んだパッケージツアーが作られたことだった。このツアーに参加することで、「自分で直接、被災地支援をしたい」というニーズを発掘したのだ。
これらの成功例は現在の日本でも活用できそうだ。ただ、NPOや一般企業などがかかわれることはあまりないように思えるかもしれない。確かに割引航空券の設定は航空会社などしかできない。パッケージツアーも旅行会社などでないと作ることは難しい。