「退職した社員」の顔写真掲載は法律上許されるか? 企業のソーシャルメディア活用に潜む落とし穴

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一方、ホームページの掲載された本人のコメントについては、個人情報保護の観点で問題があります。生存する個人に関する氏名、生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報は「個人情報」といい、個人情報保護法によって保護されています。個人情報を取り扱う企業は、この法律を理解して運用していく必要があります。

社員をPRに使うことが難しい時代に

このようなリスクを回避するためには、どうすればいいでしょうか。

まず、大前提は従業員本人の明確な同意を得ることです。その際、たとえば「在職中/退職後6カ月間はホームページへの写真掲載を認める」というように、お互いに無理のない合意をする努力が必要でしょう。

また、社員個人が特定されるレベルの写真を使う必要があるのかどうかも、検討の余地があるでしょう。

たとえ社員といえども、その個人情報を会社側が勝手に公開することは許されません。社員を企業 PR や求人目的などのために起用し、顔出しや個人情報を公開する場合は、必ず本人と条件などを協議して、同意のうえで掲載しなければなりません。

今は終身雇用時代のように一生ひとつの会社で働く人は減っており、短期間で退職するケースが増えています。そんな、社員の流動性が活発な時代にあって、社員をPRに使うことは難しくなっているのです。

(構成:間杉俊彦)

北田 明子 広報・PR、危機管理広報アドバイザー

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きただ あきこ / Akiko Kitada

大学卒業後、1983年大阪読売新聞社入社。89年同社退職後イギリスに留学。帰国後フリーランスの経済誌記者などを経て、2001年対中国投資コンサル会社の副総経理として中国に駐在。05年に帰国後、危機管理広報を中心とした広報アドバイザーとして活動。11年民間から大阪市交通局の広報課長に就任。19年堺市の広報戦略専門官に就任。22年に堺市を退職後は文筆活動のかたわら、民間や自治体の広報アドバイザーとして活動中。22年より滋賀県公文書管理・個人情報保護・情報公開審議会委員。主な著書に『笑うヤミ金融』(ダイヤモンド社)、『企業法務と広報』(共著・民事法研究会)、『企業の法務リスク』(共著・民事法研究会)がある。

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