大正製薬の「7100億円で非上場化」にくすぶる不満 株価に「5割のプレミアム」でもPBRは1倍割れ
市販薬の国内市場は、人口減少でそもそも縮小傾向にあるうえ、ドリンク剤や育毛剤は競争も激しい。そこにコロナ禍の外出自粛が重なり、ドリンク剤と風邪薬が打撃を受けた。2018年度以前は安定して300億円以上の利益を上げていた市販薬事業だが、2019年度以降の3年間はその4~5割減に落ち込んだ。
同社はMBOに関するリリースで、中長期的な成長のためには、ネット販売への対応や海外事業拡大など、事業構造の大きな転換と先行投資が必要であると説明。それらの投資を「株式市場からの評価にとらわれず」迅速に行うために、非上場化を決断したとする。
東海東京調査センターの赤羽高シニアアナリストは「資金調達に困らない企業では、上場コストを広告や製品価値向上策に振り向けたほうがいいという考え方もある」としたうえで、「大正製薬をカバーするアナリストは少なく、IR(投資家に対する情報開示)などに必要なコストが見合わなくなっていることも理由の1つではないか」と分析する。
PBR1倍割れのTOB価格に批判
しかし創業家のもくろみどおり、MBOが滞りなく成立するかは不透明だ。
というのも、MBO発表後に大正製薬の株価は急騰。足元では8700円前後と、TOB価格(8620円)を上回る水準で推移しているからだ。
さらに12月1日には、マネックスグループの投資助言会社、カタリスト投資顧問が今回のMBOについて「少数株主を軽視した判断である」との意見を表明した。同社が投資助言を行うマネックス・アクティビスト・マザーファンドは大正製薬の株式を以前から保有しており、今年7月末時点で同ファンドの純資産総額に対し5.26%を投資していた。
【2023年12月6日10時06分追記】ファンドの保有株に関する初出時の表記を上記の通り、一部修正いたします。
カタリスト投資顧問が問題視したのは、PBR1倍を下回るTOB価格だ。発表前営業日の終値に5割超のプレミアムをつけたTOB価格でも、PBRは0.85倍にとどまる。
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