大正製薬の「7100億円で非上場化」にくすぶる不満 株価に「5割のプレミアム」でもPBRは1倍割れ
象徴的だったのは、2022年に行われた東京証券取引所の市場再編時の対応だ。当時、東証1部に上場していた大正製薬は、プライム市場上場の条件を満たしていたにもかかわらず、あえてスタンダード市場を選んだ。
理由として挙げたのは、プライム市場が海外投資家の呼び込みを重視しているのに対し、大正製薬は国内中心に事業を展開し、株を保有する海外投資家は少数であるということ。プライム上場を維持するために必要となるコストを、既存の事業領域に集中させようと考えたようだ。
昨今、改善圧力が高まる株価向上や資本効率見直しへの対応策も乏しかった。
大正製薬の株価は、1万4000円近くを記録した2018年をピークに下落。2023年に入ってからは5000~6000円の間を推移していた。株価低迷に伴いPBR(株価純資産倍率)も1倍割れが続き、9月末時点の同社のPBRは0.60倍だった。
東証からの改善要請を受け、PBR1倍割れの企業の間では3月以降、増配や自己株取得などの対応策を検討する動きも増えている。
大正製薬は長年有利子負債がゼロ、2023年3月期末の自己資本比率は82.9%と、好財務体質だ。ところが同社は配当と自己株買いについて従来方針を維持。他社のように、株主還元を強化するような姿勢はみられなかった。
上場企業に求められる経営のあり方と同社の方針のズレが目立つ中、ピーク時から株価が6割も下落した今は、経営陣にとって“買い時”だったとも言える。
医薬事業は2期連続で赤字
大正製薬の株価が低迷してきた背景には、市販薬や、医師が処方する医療用医薬品を取り巻く環境の変化への対応の遅れがある。
医療用医薬品を扱う医薬事業は、ジェネリック薬の参入や薬価引き下げのあおりを受け、直近では2期連続で赤字となっている。こうした状況の中で同社は今年、早期退職優遇制度を実施。応募した645人の多くは医薬事業の社員だったという。
他方でリポビタンやパブロン、リアップなどが支える柱の市販薬事業も、最近は収益の悪化が目立つようになっていた。
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