
桐壺 光をまとって生まれた皇子
輝くばかりにうつくしいその皇子の、光君という名は、
高麗の人相見がつけたということです。
目ざわりな者
いつの帝(みかど)の御時(おんとき)だったでしょうか──。
その昔、帝に深く愛されている女がいた。宮廷では身分の高い者からそうでもない者まで、幾人もの女たちがそれぞれに部屋を与えられ、帝に仕えていた。
帝の深い寵愛(ちょうあい)を受けたこの女は、高い家柄の出身ではなく、自身の位も、女御(にょうご)より劣る更衣(こうい)であった。女に与えられた部屋は桐壺(きりつぼ)という。
帝に仕える女御たちは、当然自分こそが帝の寵愛を受けるのにふさわしいと思っている。なのに桐壺更衣(きりつぼのこうい)が帝の愛を独り占めしている。女御たちは彼女を目ざわりな者と妬み、蔑んだ。桐壺と同程度、あるいはもっと低い家柄の更衣たちも、なぜあの女が、となおさら気がおさまらない。朝も夕も帝に呼ばれ、その寝室に行き来する桐壺は、ほかの女たちの恨みと憎しみを一身に受けることとなった。
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