「昇進した社員が無能になる」に対する驚く対処法 イグノーベル賞を受賞したおもしろすぎる研究

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ヘンな科学 “イグノーベル賞" 研究40講
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一方でピーター仮説では、昇進時に一気に無能化してしまう場合もあれば、新しい仕事をうまくこなせる場合もある。そこで、新しい有能度はランダムで割り当てた。例えば有能度が9だった人が5になることもあるし、反対のパターンもあり得る。

昇進サイクルを何度か繰り返した後、組織全体の効率性を算出し、次のような結果が得られた。

まずは常識仮説の、昇格した後の有能度が昇格前と同等の場合では、優秀な人を昇格させると組織の効率性は最も高まった。反対にピーター仮説の、昇進後に有能度がランダムに変わる場合では、無能な人を昇格させるほうが組織の効率性は高まる、という結果になったのだ。

ところが、組織たるものは複雑である。組織が明確にピーター仮説型だと分かっていれば、無能な人を昇格させれば良い。ただ、仮に常識仮説型であった場合は大きな損をすることになる。

ランダムに昇格させると「無難に良い」

そこで研究者たちが勧めるのは、ランダムに昇格させることだ。この場合には大きく得することはないが、組織が常識仮説型でもピーター仮説型でもマイナスにはならず、「無難に良い」ことが示された。もしくは、47%の場合は優秀な人を昇格させ、残りの53%の場合は無能な人を昇格させる混合戦略でも「無難に良い」と報告している。

この研究者たちは別の研究で、政界においても議員をランダムに選出したほうが、成立する法案の数や、社会福祉の観点で効率的だということを突き止めた。古代ギリシャの民主制はランダム選出を採用していた。歴史に学ぶことで現代の行政でも改善が望める、としている。なんだか耳が痛い。

五十嵐 杏南 サイエンスライター

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いからし あんな / Anna Ikarashi

1991 年愛知県生まれ。カナダのトロント大学で進化生態学・心理学を専攻(学士)。休学中に半年間在籍した沖縄科学技術大学院大学で執筆活動をはじめる。同大学卒業後、イギリスのインペリアルカレッジロンドンに進学。科学の専門家と非専門家をつなぐことを目的とした学問「サイエンスコミュニケーション」の修士号を取得。同カレッジ在学中に、NHK CosmomediaEurope やBBC でリサーチャーを務める。日本帰国後は京都大学の広報官を務め、2016年11 月からフリーに。2019 年9 月、一般社団法人知識流動システム研究所フェロー就任。

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