ガザ危機「10月7日、私はミサイルの音で目覚めた」 現地で支援活動した日本人が語る恐怖と「感謝」

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医療施設に対する攻撃は、明らかに国際人道法に違反する。

戦争にもルールがある。国際人道法の下で、紛争当事者は患者や医療スタッフ、一般市民に危険が及ばないようにするため、あらゆる予防措置を講じる責任がある。

ガザで7日間続いた一時休戦は12月1日朝(現地時間)に終わり、戦闘が再開されてしまった。一時休戦は決して十分ではない。MSFは、双方の紛争当事者による一般市民への無差別な攻撃を非難し、即時停戦を強く訴える。

救える命を1人でも多く救うため、11月半ばには15人のスタッフで構成する新しいチームがガザに入った。このなかには日本人の医師もいる。完全な停戦で安全が確保されない限り、十分な医療を届けることは難しい。それでも私たちは、命を守るためにできることに全力を尽くしたい。

日本に帰国した私が今できることは限られている。でも、ガザに残る同僚たちのために、そして、命の危機にさらされている人たちのために、私が経験したことを1人でも多くの人に証言し、伝えていきたい。

自分の命の危険も顧みずに今も病院で治療を行っているMSFの同僚、すべての医療者、患者さん、そしてすべての一般市民に対する無差別な攻撃を非難し、即時停戦を訴えていきたい。

世界中の1人ひとりの声が、無差別な暴力を止め、本当の停戦を実現する力になると願っている。

シファ病院で患者を診るMSFのスタッフ
シファ病院で患者を診るMSFのスタッフ=2023年10月19日。その後、同病院はイスラエル軍の攻撃に遭った Ⓒ Mohammad Masri
国境なき医師団 非営利の医療・人道援助団体

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こっきょうなきいしだん / Kokkyonaki ishidan

民間で非営利の医療・人道援助団体。紛争地や自然災害の被災地、貧困地域などで危機に瀕する人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けている。現在、世界約75の国と地域で、医師や看護師をはじめ4万9000人のスタッフが活動。1971年にフランスで設立、1992年には日本事務局が発足した。日本国内では、援助活動に参加する人材の採用・派遣、人道危機や医療ニーズを伝える証言・広報活動、現地医療活動を支える資金調達などを行っている(2022年実績)。

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