ガザ危機「10月7日、私はミサイルの音で目覚めた」 現地で支援活動した日本人が語る恐怖と「感謝」

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貧困と情勢不安の中にありながらも、人びとはガザで慎ましい暮らしを営んできた。街にはたくさんのレストランやカフェもあり、家族や友人との時間を楽しむ人たちの姿があった。外国からの来訪者である私たちに温かく接してくれ、道を歩いていると、「ガザにようこそ!」と気さくに話しかけてくれた。

そんな日常が一変したのが、10月7日だった。

MSFの同僚
2019年撮影。筆者(左)と当時ガザで一緒に働いた同僚たち ©MSF

経験したことのないミサイルの数

10月7日朝6時半、ミサイルと爆発の音で目を覚ました。宿舎の窓を開けると、目の前のビルのうしろから無数のミサイルが打ち上げられているのが見えた。

5年前にガザで活動した際も軍事衝突は経験した。しかし、この朝に見たミサイルの数は、過去に経験したものとはまったく違う。「大変なことが始まった」と直感した。

すぐに、生活を共にしている同僚たちと宿舎の地下に避難した。紛争地で活動するMSFの宿舎には、緊急時のための「退避室」がある。退避室にいてもミサイルや空爆の音が響き、爆風で建物が揺れるのを感じた。

空爆は昼夜を問わず続き、一歩も外に出ることができないまま1週間近くを退避室で過ごした。空爆の音を毎日感じながら、いったいガザの街はどうなってしまっているのだろうと、不安ばかりが募った。しかし、この1週間はこの後に続く長い避難生活の始まりに過ぎなかった。

10月13日、イスラエル軍によるガザ北部からの退避要求を受けて、北部の宿舎から南部に移動することになった。

リュック1つに最低限の荷物を詰めて車に乗り、南へと向かった。このとき車から見た光景を、私は忘れられない。

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