
殺害された人々の写真が、惨劇のあった場に無数に並んでいる。その人の人生を記した説明文も写真の下に添えられ、地面には、(戦没者を意味する)ポピーの造花やイスラエルの国旗が飾られていた――364人が殺害された「ノヴァ音楽祭」の会場は、慰霊施設となっていた。
2月26日~3月3日、イスラエルを訪れ、パレスチナ自治区ガザでの武装勢力ハマスとの戦闘や、ハマスに今も拘束されている人質の問題について、イスラエル人がどう考えているか、取材した。
2023年10月7日のハマスによるテロ攻撃によって1139人が死亡、251人が拉致された。人質は段階的に解放されたが、1年半近く経過した現在も59人(うち39人が死亡と見られる)が人質とされている(AP通信)。
人質問題はイスラエル社会の重荷となり、社会の分断も招いている。
ハマスに攻撃されたイベント会場の今
テルアビブ近郊にあるベン・グリオン国際空港に降り立つと、入国審査に向かう通路の両脇に、人質となっている人々の顔写真のプラカードがずらりと並べられている。イスラエルが直面する人質問題の深刻さをまず痛感させられる。

テロ攻撃によって、パレスチナ自治区ガザの近くに位置していたキブツ(農業共同体)などが襲われたが、そのうちの1つ、レイム・キブツの近くの駐車場では、ちょうど「ノヴァ音楽祭」が開かれ、3500人の若者が参加していた。
ここへの攻撃で364人が死亡し、40人が人質としてガザに連れ去られた。一連の攻撃で最大の犠牲者を出した場所であり、SNSで拡散された悲惨な映像が衝撃を与えた。
2月27日、テルアビブから電車とバスを乗り継いで南へ向かい3時間ほど、ガザとの境界から約5キロの距離にある同地を訪れた。
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