ビジネスケアラー"抱え込むな"介護と仕事は同じ 「家族と介護サービスのプロによるチーム戦」

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つまりこの男性の場合は、介護を家族に任せることなく、1人でこなそうとしていることが、かえって家族の精神的な負担になっていたわけです。責任感を持って介護に臨むことは素晴らしいことですが、それだけでは、必ずしも理想的な介護につながるとは限らないのです。

介護職はこの家族の家族会議に同席し、その場で奥さんや子どもに思いを話してもらいました。そしてこの男性が1人で抱えていた介護の一部を、奥さんや子どもとも分かち合う、という合意に導いたそうです。

さらにその場で、家族でやらなくてもよいことも見つけ、適切な介護サービスの導入も実現しました。

もちろん、これだけで認知症の介護からくる負担がゼロになったりはしません。この男性の介護負担がどこまで減ったかは、はっきりしたことは言えません。ただ、この家族は、お互いの気持ちを正直に伝え合うことによって、より優れたチームになれたのではないでしょうか。

介護とはマネジメントである

ここまでの話を読んで「仕事と同じだな……」と感じた人がいたら、鋭いです。1人で仕事を抱え込んでいる人は、意外と成果が出せずに思い悩みます。

それに対して、周囲と上手に仕事を分け合って、チームとして成果を追い求める人は、大きな成果を出しやすいでしょう。経営学者トーマス・ダベンポートが明らかにしたとおり、大きな成果を出す人材というのは、優れた人脈を活用しているものなのです。

ある介護の研究を行う研究者によれば「介護とは、家族と介護サービスのプロによるチーム戦」とのことです。

ビジネスケアラーとして仕事と介護の両立に成功している15名のケースの追跡からわかったのは、優れたマネジャーは、仕事で培ったその能力を用いて、上手に介護の負担を分散していたというのです。

実際にこの研究者が観察したのは、次のようなことでした。

(1)介護者は、家族と介護サービスで構成されたチームのマネジャーであるという意識を持つこと。

現実に、日々のビジネスにおいて、マネジメント経験がある人のほうが「仕事と介護の両立」に成功している。逆に言えば、介護経験は、マネジメントのトレーニングにもなる。

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