そのような情報感度と知識が低い人たちが装備開発をして、果たしてまともな装備が開発できるのだろうか。新装備を開発するならば諸外国の同様な装備の動向はもちろん、その装備が実用化され、使用され続ける将来にわたっての想定を行うことが可能だ。そのための基礎となるのが情報だ。その情報が軽視されているのだ。
MASTのような見本市で多くの幹部や開発担当者が実際に海外の関係者と直接接触し、情報交換をする機会ができたことは、幹部や開発担当者の啓蒙という観点で大きなメリットだ。この点は高く評価したい。今後、是非ともこうした機会を増し、情報に鈍感な体質を改善すべきだ。
国内メーカーの意識も低い
残念なのは、防衛省や自衛隊だけでなく、国内メーカーの意識も低いことだ。日本パビリオンのジャパン・マリンユナイテッド(JMU)の防衛装備品開発・製造部門であるJMUディフェンスシステムズのブースでは同社が自主開発している水陸両用車(Amphibious Vehicle)の模型やビデオが展示されていた。
ところが、ペイロード(積載重量)や速度などの具体的な説明が全く表示されておらず、説明担当者に聞いても「言えません」というばかりだった。そこで筆者といささか議論になったのだが、その後、取締役がやってきて、ようやく簡単な説明を受けることができた。
展示された水陸両用車は、同社が陸上自衛隊向けに開発し、製造した94式水際地雷敷設装置をベースに自社ベンチャーとして開発しているもので、基本的な車体レイアウトは94式に準じているが、94式が4×4の車輌であるのに対し6×6となっており、より不整地を含む路上での走行能力が向上している。
説明によると、路上最大速度は94式の毎時50kmを上回る、毎時約65km程度。ペイロードは6トン程度で、人員であれば28名程度の輸送が可能だ。航行時の推進システムはプロペラ式の94式とは異なり、2基のウォータージェットを使用し、浮航時の最大速度は毎時10ノットに達する。シーステート3での運用が可能とされているが、会場で公開された試験時の映像では、限りなくシーステート4に近い海面での浮航が行われていた。同社では陸上自衛隊で新たに編成される水陸両用部隊用の兵站用や、大規模災害の救援などを想定して、防衛省に提案を行なっている。また離島の多い国や地域への輸出需要を探ることも視野に入れているとのことだった。
このくらいの説明ができるならば、リーフレットや展示ポスターに明記しておくべきである。むろん開発中のものは、性能や仕様はフィックスされたものではない。だが、現段階の性能や目指すレベルは明記しなければ、来場者は困ってしまう。
これは同社の自社ベンチャーであり、輸出も念頭に置いている。全く情報を開示しなければ海外の軍やメーカー関係者はもちろん、メディアの人間からもまともな注目は浴びない。であれば何のために高い出展料を払って、多くの社員の時間を割いて出展したのだろうか。不慣れな面もあるのだろうが、次回の出展の機会には、改善するべきだろう。
なぜ、情報開示が必要なのだろうか。
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