「国際軍事見本市」が、日本の国防力を高める 日本での初開催イベントの意義は大きい

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既存の防衛産業は、少数の企業間で利権化しており、外部からの参入が難しい。何しろアラミド防弾繊維で世界第二位の帝人ですら、国内防衛市場に参入を諦め、海外でのビジネスに専念しているくらいだ。このため業界は閉鎖的でコスト意識が低い。また諸外国の動向にも鈍感だ。しかし防衛装備の調達は年々減っているために利益が減っているので、研究開発や設備投資ができない企業も多い。これを「美談」として語る向きもあるが、それは技術革新ができず、時代遅れの製品や素材を延々と使い続けるということを意味している。そして最後には倒産や事業整理、自主廃業が待っている。実際にそのような企業が増えている。

だが例えば既存のメーカーが1000万円でやっている仕事を別な技術を用いて十分に利益を出しつつ、100万円でこなせるメーカーなどもあるだろう。

例えば、かつて護衛艦に光ファイバーを導入しようとした時に造船所から、大きな抵抗があった。既存の銅線などのケーブルを、情報量が圧倒的に大きい光ファイバーに置き換えるならば、ケーブルの納入業者や配線関連の工員の仕事はもちろん、工数が減るからだ。同様に我が国の護衛艦で統合電気推進の導入が進まないのは、エンジンやギアなどのメーカーの仕事が減るために抵抗が大きいと聞いている。

防衛産業を活性化しなければコストダウンは不可能

新たな企業、新たな技術を導入して防衛産業を活性化しなければコストダウンはもちろん、防衛産業の生産基盤の維持も不可能となるだろう。

だが現状防衛省はそのような新しい企業の発掘や登用を殆ど行っていない。またメーカーや商社にはユーザー側である自衛隊からの情報のフィードバックも極めて少ないことも問題だ。これは過剰に運用などの情報を隠すためだが、このために納品している装備の改良や改善、コストダウンの提案が難しくなっている。

見本市の開催を通じて様々な業種のメーカーや商社などと直接接触して情報を得ることは調達や研究機関だけでなく、一線部隊の隊員にとっても大きな刺激となる。また業者側も売り込みの機会が得られることは勿論、一線の隊員の生の声から要求や不満を吸い上げることができ、それを製品開発や改良に活かすことが可能となる。

繰り返すが防衛省、自衛隊、防衛産業には情報とその収集能力がかけており、内向きである。これを改善しない限り、効率的な予算調達の効率化、防衛装備の輸出の拡大は難しいだろう。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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