「国際軍事見本市」が、日本の国防力を高める 日本での初開催イベントの意義は大きい

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その理由は、具体的な情報を出すことによって、初めて具体的な商談ができるからだ。例えば海外の軍隊から「ウチで使うならばペイロードは少なくても、不整地走行能力が高いほうがいい」とか、「ペイロードは最低でも10トン欲しい」とか具体的なリクエストが出たり、有用な情報も得られたり、ということがあるはずだ。また競合他社製品、例えばシンガポールのシンガポール・テクノロジー・キネテック社は同様の水陸両用トラックを開発しているが、当然ながらこれらと比較しての質問など出るだろう。そこで「何も言えません」ではあきられるだけだ。

防衛産業だけではなく防衛省、自衛隊関係者もそうだが「防衛ムラ」「自衛隊ムラ」の慣れ合いにどっぷり浸かっており、外部の組織や他国の「同業者」からの刺激、すなわち議論や批判に身を晒していない。つまり「他流試合」の経験が無いため、「身内」や「お上」のゴキゲンを取ることが優先されてしまう。ゆえに批判に対して極めて脆弱であり、たまに批判されるとまともな反論すらできない。

このような悪弊を打破するためにも、メーカーや防衛省、自衛隊も積極的に軍事見本市に出展し、また海外の見本市の視察を行うべきだ。情報収集と「他流試合」を通じて低コストで、高性能な装備の開発を目指すべきだ。本年9月、ロンドンで開催される見本市、DSEIには日本パビリオンがオーガナイズされ、防衛省も初めてブースを出展する。是非とも多くの防衛省、自衛隊はより多くの幹部、開発関係者を派遣し、諸外国と同じ土俵で戦える程度に彼らの知見と見聞を高めて欲しい。

自衛隊施設内で見本市を行うべき

筆者は国内で防衛省あるいは自衛隊の施設内で見本市を行うことを提案したい。例えば海自の下総の航空基地のハンガーや、陸自の朝霞駐屯地内などで、主として国内の企業を中心とした見本市を行うといいだろう。これには既存の防衛産業のベンダーや、中小商社、これから防衛産業に参入したい企業を参加させるべきだ。

自衛隊の施設を使用すれば出展料は極めて安価に設定できるので、中小企業も参加し易い。実際陸自の松戸駐屯地の需品学校ではかなり参加企業を絞った需品関連の展示会「QMフェア」を開いている。また先述の富士合同調査研究会でも同様な展示会も開催されている。

現状、防衛省や自衛隊では防衛産業のメーカーと付き合いがあるのは主契約社や大手企業ばかりだ。既存ベンダーはもちろん、参入可能な潜在的な企業への接触はなく、彼らについての情報をほとんど持っていない。またベンダーから提案があっても官側にそれが伝わらない場合も多い。

例えば東日本大震災で飛ばなかった陸自UAVに代わって福島第一リアクターを偵察したUAVのメーカーであるフジインバック社は川崎重工の協力会社として陸自用の標的用ドローンを供給している。また、同社は陸自に対して日立が提案している偵察用UAVの機体を開発している(これは現在ボーイング社のスキャンイーグルと競合している)が、防衛省や自衛隊と同社との接触はほとんどなく、防衛省や自衛隊の関係者には同社の実力は知られていない。

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